“みんなの夢”をかなえた3人の天才 卓球団体「いつか男子も」想い実る

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リオから東京五輪につながる大きなメダル

鍵となったダブルスで勝利をもぎ取った吉村(右)と丹羽。倉嶋監督に「今までの試合で一番の出来」と言わしめた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 だが、ドイツ戦は違った。1番手の吉村こそ完敗を喫したが、水谷は期待通り2勝し、ダブルスで出場した丹羽も、質の高いチキータを駆使してこれまでにないくらい攻撃的な姿勢を見せた。吉村もその丹羽に引っ張られるような形で、持ち前のフットワークを生かし、果敢に打ち合った。

 倉嶋監督は言う。

「丹羽も吉村も団体戦でメダルを取るんだという気持ちがすごく強かった。自分たちが点数を取れば、あとは水谷に託せるというのがあったと思います。そうした中でキーとなるダブルスを取ってくれたので、この結果が生まれたんだと思います」

 実は、倉嶋監督はドイツのオーダーを読み違えていた。1番手で吉村とボルを当てて、水谷とオフチャロフをエース同士でぶつける。それで2勝を狙っていたという。しかし、そのもくろみは崩れ、吉村が相手エースのオフチャロフと、水谷が苦手なボルと対戦することになってしまった。下手をすれば2敗してもおかしくない状況だったが、それを水谷が食い止め、鍵となったダブルスでも丹羽と吉村が会心の試合を見せた。

 今回のメンバーである水谷、丹羽、吉村を、倉嶋監督は「3人の天才たち」と称する。事実、過去10年間の全日本選手権で優勝した経験があるのは、彼らだけだ(水谷が8回、丹羽と吉村が1回ずつ)。

「このメンバーで負けたら日本は仕方ないだろうという選手を送り出せたと思っています。日本が誇る3人の天才たちが(卓球が五輪の正式種目となってから)28年の扉を開いてくれたのは感慨深いですね」(倉嶋監督)

 水谷は、シングルスと団体の両方でメダルを獲得した意義について、こう語る。

「シングルスは『自分の夢』であって、団体戦は『みんなの夢』でした。自分だけじゃなくて、この喜びを共有したかったので、それを成し遂げることができてうれしかったですし、史上初の男子団体のメダルということで、リオから東京五輪につながる大きな大きなメダルだと思っています」

 日本卓球界に新たな歴史を刻んだ3人の天才たち。そしてその表情には、充実感と確かな自信が浮かび上がっていた。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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