驚異の16歳、競泳・池江インタビュー 日本新連発も「すごく怖かった」
周りに負けたくない選手がいる
女子800メートルリレー予選、仲間と共に声援を送る 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
あの子はメドレーリレーで銅メダルも取って(メダルの色を)全部そろえていたので、すごくうらやましいです(笑)。今は体格などで差が生まれてきてしまっていて、私は今後、あの子みたいに体が大きくなることもないと思います。だから技術面を磨いていけたら、いつか勝てる日が来るのではないかと思っています。
――今回の五輪でやり残したことはありますか?
力を出せなかった種目もありますが、全部ひっくるめて振り返ったら、レースの種目も多かったし、結果は良くても悪くても、自分にとって、人生の中でずっと記憶に残る出来事だったんじゃないかなと思っています。
――ここまで強くなれた理由を、ご自身ではどう考えていますか?
日本でもそうですけど、周りに「負けたくない」と思える選手がいるので、お互い切磋琢磨(せっさたくま)してきました。そういう選手がいるから、ここまで来られたのではないかなと思っています。
――負けたくない選手というのは、同世代の選手たち?
同世代もそうですけれど、やっぱり日本選手権に出れば内田美希選手(東洋大)だったり、五十嵐千尋選手(日本体育大)だったり、すごい選手がたくさんいます。そういう選手を見て育ってきたし、そういう選手と一緒に泳いできたから、ここまで来られたと思っています。
強くなるために必要な「人間性」
競技力もそうですが、人間性というものもすごく大事になってくると思っています。悪く言うわけではないですが、例えば選手村で会って、あいさつした選手から、あいさつが返ってこなかったらどうかと思うんです。「あぁ、こういうあいさつって大事なんだな」と思うことがたくさんあったりする。どんな選手でも人間の基本的なことからできる人はすごく良いなと思うし、周りから見ても良いなと思えますよね。そういう選手が伸びていくのではないかなと思います。
――そういった人間性も含めて、理想とする選手はいますか?
う〜ん……本当は理想とかあったほうがいいのかもしれないんですけど、けっこう「自分は自分」と思っちゃうところがあるので(苦笑)。ただ、本当に一人の誰かというより、みんなの良いところをたくさんかき集めて、自分の中に取り入れられたら一番良いんじゃないかと思います。
――人間性を育むために、具体的にはどうしていきますか?
えー、何ですかね? やっぱり良い人、悪い人ってずっと一緒にいたら見えてくると思うんですよ。「こういう人になりたい」と思ったり、「こういうふうにはならないようにしよう」と思うことも少なくないので、そこから学んでいけるのではないかと思います。
――もともと自分はどんな性格だと思う?
負けず嫌い……かな。
――今回、同世代の選手が池江選手のほかに4人出場しましたが、五輪期間中はどんな話をしましたか?
リレーで酒井夏海選手(スウィン南越谷)と一緒に組んだり、あとは一番仲の良い今井月選手(豊川高)と一緒だったというのもあるし、本当に4人がいて去年とはまるで違った雰囲気でした。去年の世界選手権は持田早智選手(ルネサンス幕張)しかいなかったので、すごく寂しいというか、心細いところがあったんですけど、今年はたくさんの同世代がいて、支えてくれたし、緊張を和らげてくれる存在でした。
スプリントを極めたい
7種目12レースに出場した16歳は「すごく楽しめたし、充実していた」と振り返った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
また日本に帰ってから試合がたくさんあるし、その試合で力を抜くとかは好きじゃないので、1本1本全力で泳いでいきたいと思っています。今年は12月に世界短水路選手権があって、短水路は昔からずっと得意なので、そこでは日本記録やメダルを目指したいです。そして来年は世界選手権があるので、去年のグダグダな結果を挽回できるような試合にして、2020年までには多くの試合に出ると思うし、少しずつ記録を残していきたいなと思っています。
――バタフライと自由形以外に挑戦したいと思っている種目はありますか?
実はまだコーチには言っていなくて、終わってから言おうかなとは思っているんですけど、スプリントを極めたいなと思っていて……。萩野公介選手(東洋大)は200メートル以上だったら何でも速いじゃないですか? だから自分もそういうふうにいろいろな種目で速い選手になりたいと思っています。50メートルでも100メートルでも、背泳ぎ、平泳ぎはこれから頑張って、きっとその4種目が速くなったら個人メドレーも強くなれるんじゃないかなと思うので、それを目指して頑張りたいです。
――長いよりも、短い距離のいろいろな種目に取り組みたいと?
そうですね。やっぱり200メートルになっちゃうと気持ちの面で初めに負けちゃう部分があるので……。私はやっぱりスプリントで戦っていきたいと思っています。
――以前から200メートルは泳ぐのがきついと言っていましたもんね(笑)。
前は本当に嫌でしたね(苦笑)。ただ、五輪前になって、「200メートルがきついのは当たり前だから、きついと思うよりは楽しんで泳ごうと思ったほうが楽なんじゃない?」と言われたので、少しずつ200メートルに対する気持ちは変わってきてはいます。ただ、今回の五輪の4×200メートルリレーでは全然、200メートルでタイムが出なかったので、一瞬ちょっと嫌だなと思うところはありましたね(笑)。来年も4×200メートルリレーはあるので、今回できなかった日本記録更新を目指していきます。
――最後の質問です。注目度が上がってこれまで以上にプレッシャーがかかると思いますが、どうやってそれを乗り越えていきますか?
今までいろいろな方に応援されて、こうしたインタビューもしていただいてきたのですけど、それをプレッシャーと感じることは少ないんですよね。もともとプレッシャーはあんまり気にしないほうなので、いつも通りの自分でいられたらいいなと思います。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)