指揮官も説得、メッシが代表引退を撤回 新生アルゼンチンのスタイルは?

紆余曲折の末バウサ体制が発足

アルゼンチン代表の新監督に就任したバウサ。初陣となるW杯予選でどのようなスタイルを見せるのか 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 深刻な汚職体質が発覚したことでFIFA(国際サッカー連盟)の介入を受けている現状もあり、AFAの新監督探しは大いに難航した。当初はホルヘ・サンパオリやディエゴ・シメオネ、マルセロ・ビエルサらの招へいを試みたものの、サンパオリは高額な違約金が障害となり断念。アトレティコ・マドリーでの続投を選んだシメオネ、自身のタイミングではないとしたビエルサにもオファーを断られた。

 そのような状況下、AFAの運営を代行する正常化委員会の責任者アルマンド・ペレスは、ラモン・ディアス、カルロス・ビアンチ(彼は監督業からの引退を決めた)、ミゲル・ルッソら複数の指導者と面談を行った末、最初に話し合いの場を持ったバウサとの契約にこぎつけた。

 選手時代のバウサは世界各国の1部リーグにおいてセンターバックとしては歴代4位の得点数を積み重ねた攻撃的なDFであり、強烈な個性と勝者のメンタリティーを持った選手だった。監督としては母国アルゼンチンに加えてペルー、エクアドルなどのクラブを指揮し、08年にリーガ・デポルティーボ・デ・キト、14年にはサン・ロレンソを率い、コパ・リベルタドーレスを2度制している。前者はエクアドル史上唯一の、後者もクラブ史上唯一の快挙である。今季はブラジルのサンパウロを率いて同大会の準決勝まで勝ち進んだ。

新監督の目指すスタイルは?

 前述のように、バウサはバルセロナへ飛び、メッシと話し合いの場を設けた。出発前、彼は代表復帰を要請しにいくとは明言せず、「フットボールについて語り合いたい」とだけ話していたが、一方で「世界最高の選手がいないアルゼンチン代表など想像できない」とも口にしている。

 最終的にメッシは代表復帰を受け入れ、9月1日にホームでウルグアイ、6日にアウェーでベネズエラと対戦するW杯予選のメンバーにも名を連ねた。新指揮官のバウサがどのようなシステムとプレースタイルを用いるのか。彼は「バランス」という言葉をよく口にし、リードを得れば数メートルラインを下げて、逃げ切りを図ることも厭わないタイプの監督である。

 バウサが選んだ9月のW杯予選2試合の招集メンバーリストは、ゴンサロ・イグアインが外れるなど多少の変更はあるが、すでに予告していたようにマルティーノ時代のそれと大きく変わることはなかった。新生アルゼンチンがどのような戦いを見せるのか、答えはひとまず9月に分かるだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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