ダル絶賛右腕が都市対抗で見せた凄み 170センチと小柄な体で大人の投球
170センチの右腕が95球完封劇
社会人ナンバーワン右腕・山岡。高校時代にダルビッシュが絶賛したスライダーと140キロ台後半のストレートでNTT西日本打線を完封した 【赤坂直人/スポーツナビ】
16日に東京ドームで行われた都市対抗1回戦で、東京ガス・山岡泰輔がNTT西日本をわずか3安打に抑え、8奪三振、無四球完封勝利を挙げた(スコアは2対0)。サンデー毎日臨時増刊「都市対抗official Guide Book 2016」のプロフィール欄には170センチ65キロと書かれている。マウンドに立つ姿は確かに小柄だが、ひとたびボールを投げると、その印象はガラリと変わる。
山岡の投球フォーム
内角に投げられる左打者は得意
右投手には投げにくいとされる左打者が6人並んだが、「ストレートもスライダーもインコースに投げられるので左打者は得意。左打線で組んでくるだろうなと思っていたけど、思い通りきてくれたので投げやすかった」と95球の完封劇を振り返った。
ピンチにも動じないマウンド度胸
初回、先頭打者の梅津正隆にレフト前ヒットを許すなど2死二塁のピンチ。ここで予選4割2分1厘の4番・高本泰裕を迎える。先制点を与えたくない場面でプレッシャーがかかっているかと思いきや……「試合前から4番だけを注意して投げようと思っていた。ここは勝負どころだなと思って三振を取りに行った」と変化球で追い込み、気合の148キロのストレートで空振り三振と思い通りのピッチングを披露。
1点を先制してもらった直後の2回には、先頭打者・中西純平の二塁打をきっかけに1死三塁とまたもピンチを迎える。早く追いつきたいNTT西日本は打者・永松孝太のときに2ストライクからスクイズを敢行。三塁走者がベースから離れているのが見え、スクイズを見切った山岡は、「自分のスライダーだったらバントでもバットに当たらないので思い切り腕を振って投げた」と、あわてることなくスライダーを投じる。渾身の1球は永松の差し出したバットをかいくぐって捕手・山内佑規のミットへ。結果は空振り三振となり、三塁走者も三本間でタッチアウトとダブルプレーでしのいだ。
6回に三度得点圏に走者を背負った。先頭打者・大城卓三にセンターフェンス上段に直撃する二塁打を浴びる。ここで、NTT西日本・大原周作監督がフェンスオーバーじゃないかと審判に確認するためベンチを飛び出した。初回以降味方の援護はなく、1点もやれない張り詰めた雰囲気の中での中断に、嫌な“間”が漂う。それでも、山岡の心境は「中断は全然気にならなかった。ホームランだったら1点だし、入らなかったら無死二塁から投げるだけ」とあっけらかん。
判定は覆ることなく無死二塁から再開されたが、ここで山岡は「チームとしては1点はしょうがない場面だったけど、個人的にはゼロで抑えたかった」とギアを一段上げる。景山拓也のピッチャー返しを「思わず出た」と右足で止め、ピッチャーゴロ(実際はスパイクの裏でダメージはなかったとのこと)。続く梅津には内角をえぐる144キロのストレートで見逃し三振、中村篤人をファーストライナーに仕留めて、ホームへの生還を許さなかった。
投球の幅広げた自覚と経験
菊池壮光監督が「第3代表決定戦が彼を大きくしてくれたはず」と語ると、山岡も「あの試合に比べれば今日はワクワクしていた。楽しんで投げられた」と気持ちの変化を明かした。今後身長は大きく伸びることはないかもしれないが、“自覚”と“経験”でピッチングの幅はどんどん広がっているようだ。
ことし高卒3年目でプロ解禁年。瀬戸内高時代にもドラフト候補としてリストアップされたが、社会人でも順調な成長曲線を描く。先発ローテーションが足りないプロ球団からは先発のできる即戦力投手として高い評価を得ている。しかし、山岡は「(プロの)意識はまったくない。目の前の試合を投げるだけ。そして自分が投げた試合は全部勝ちたい」と周囲の喧騒はどこ吹く風だ。
試合が終われば普通に街を歩いているような若者にしか見えないが、都市対抗という大舞台で実力を存分に発揮した。170センチの小柄な右腕から今後も目が離せない。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ