幾度の「準優勝」が生きたマリー 経験値でつかんだ2度目のウィンブルドン

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マリーが意識したラオニッチの特徴

グランドスラム決勝に初めてたどり着いたラオニッチ。若手選手の突き上げが目立ってきた 【写真:ロイター/アフロ】

 ラオニッチはビッグサーブでツアーに登場してきた。ここまでマリーとの対戦成績はマリーの6勝3敗だが、ここ3年間はマリーの5連勝。フェデラーの記憶では、ベースラインから打つだけだったラオニッチがここ2年ほど、しきりに前に出て来るようになったという。

 ラオニッチにすれば、例えば錦織圭(日清食品)に楽天オープンの決勝で2度(2012年、14年)、全米オープン(14年)、デビスカップ(15年)など大事な試合で負けたことを踏まえて、オールラウンドへの転向を目指したのだろう。その流れの中で、全仏前には芝対策としてジョン・マッケンローを臨時コーチに招へいしている。ネット攻撃は反射動作で、常に意識が前へ前へと向いていた。

 マリーはそこを十分に意識して戦っていた。平均時速201キロで確率64%というラオニッチのファーストサーブをとにかく返し、残り36%で反撃に出る。そうした絞り込んだ局面での神経戦になれば、やはり経験がモノを言うようだ。

誰よりも頂点に立つ難しさを知る男

 マリーはこれがメジャー通算3度目の優勝だったが、2012年全米オープンのグランドスラム初制覇まで4度も準優勝を味わった。全豪オープンに至っては計5度も決勝に進みながらいまだに優勝できていない。フェデラー、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)を前において、マリーほど頂上に立つことの難しさを知っている選手は他にいないだろう。過去10度のグランドスラム決勝の相手は、すべてジョコビッチかフェデラー。格下相手は今大会が初めてで、第2、第3セットの大差のタイブレークは、その経験値の差だ。

 ナダルの欠場、雨による日程の狂い、思いもしなかったジョコビッチの3回戦敗退を受けて心配された大会だったが、今年もウィンブルドンはテニスの未来を明確に示した。ジョコビッチを追ってきたマリーを、さらに新しい力が追いかけている。リオデジャネイロ五輪が行われている間にも、今年最後のグランドスラム、8月の全米オープンに向けて戦いは続けられる。

(文:武田薫)
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