ユーロ2016の出場国拡大に賛否両論 各国記者が分析するグループステージ

元川悦子

16カ国から24カ国に出場枠が拡大

強豪国が順当にベスト16入りした一方で、初出場のアイスランド(写真)、44年ぶりに出場したハンガリーなど伏兵が大躍進 【写真:ロイター/アフロ】

 現地時間6月10日、サンドニのスタッド・ドゥ・フランスで行われたフランス対ルーマニア戦で開幕したユーロ(欧州選手権)2016。22日でグループステージが終了し、大会2連覇中のスペイン、2014年ワールドカップ(W杯)覇者のドイツ、ホスト国・フランスを筆頭に、強豪国はそろってベスト16に進出した。その一方で、ユーロ初参戦のアイスランド、44年ぶりの出場だったハンガリーなど伏兵が大躍進するというサプライズも起きている。

 そんな今回のユーロで、1つの大きな変化があったことを忘れてはならない。出場国が1996年のイングランド大会から12年ポーランド・ウクライナ共催大会までの16カ国から、24カ国に増えたのだ。これは08年9月のUEFA(欧州サッカー連盟)理事会で決定した事項。当時のミッシェル・プラティニ会長が枠の拡大を推し進め、賛否両論が渦巻いた。

 76年ユーゴスラビア大会からユーロを取材しているイングランドのベテランジャーナリストで、現在は『イブニングスタンダード』に寄稿するパトリック・バークレー記者も「プラティニの決断は正直、バカげていると思った」と本音を吐露する1人だ。

「24カ国が参加して、16カ国が決勝トーナメントに残るとなれば、強豪国とそれ以外の国に実力差が生まれやすい。結果的に大味な試合が増えて、大会のレベルが下がる。そういう懸念は確かにありました」

 欧州では彼と同じような意見を持つメディアが大半を占めていた。けれども、実際に大会が始まってみると、波乱含みの展開が続き、大差のつく試合はほとんどなかった。

拮抗した試合が多かったグループステージ

グループステージ3分けに終わったポルトガルは3位通過。出場枠拡大で救われた形となった 【写真:ロイター/アフロ】

 特に激戦だったのがF組だ。1位通過が確実と見られていたポルトガルが14日のアイスランド戦で1−1の引き分けと、ユーロ初出場国にいきなりつまずく苦しいスタートを強いられた。18日に行われた第2戦のオーストリア戦も0−0のドロー。ハンガリーが首位に立つという予想外の形になった。

 そのハンガリーとの直接対決だった22日の最終戦は壮絶な打ち合いになり、ポルトガルは3−3のドローに持ち込んで3位でフィニッシュ。勝ち点と得失点差によって何とか16強入りしたが、「アイスランドがオーストリアに勝ったのを知った時はもうダメかと思った」とクリスティアーノ・ロナウドがため息交じりに語ったほどの追い込まれ方だった。実際、16カ国開催であれば、ポルトガルはグループステージで敗退していた。彼らも出場枠拡大で救われたのだ。

 イングランドとウェールズ、スロバキア、ロシアが同居したB組、イタリア、ベルギー、アイルランド、スウェーデンが同居したE組なども想像以上に拮抗(きっこう)した展開になっている。この現象についてはバークレー記者も驚きを禁じ得ないという。

「16カ国出場だと2巡目までに2位以内が決まって、3巡目は消化試合になるケースも少なくなかった。でも今大会は3位の上位4チームまで決勝トーナメントに行けるということで、3巡目まで意味のある試合が続きました。開幕2連敗していたA組のアルバニアやD組のトルコのようなチームでも、3巡目に勝って勝ち点3を挙げれば、16強入りできるかもしれない。そういう前向きな意欲を強く感じられたのは、ポジティブな要素だったと思います」

 3位まで上位進出の可能性があるため、小国が希望を持ってグループステージに挑めたと評価する声は他からも聞こえてきた。フランス・ボルドーに本拠を置く『Sud-Ouest(スッドゥ・ウエスト=南西新聞)』のパトリック・ファビエール記者はこう語っている。

「これまでユーロで見たことのなかったアイスランドや北アイルランド、ウェールズ、アルバニアといった国が非常にいい戦いを見せられたのも、24カ国に枠が拡大し、出場チャンスを得たから。本大会に参戦できる喜びと高いモチベーションは選手のみならず、大挙してフランスを訪れたサポーターからも感じられました。グループステージの最後までどこが勝ち上がるか分からないスリリングさを味わえたのも大きかった。ラウンド16を設けたのはすごくいいアイデアだと思います」

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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