開幕2戦で露呈したイングランドの悪癖 英国対決を制すも、前線の編成は定まらず
経験不足が指摘されるイングランド
今大会のイングランドは20歳のデル・アリ(20番)ら若い選手が多く、「経験値のなさ」が指摘されている 【写真:ロイター/アフロ】
開幕2戦で露呈したのは一本調子である同国の悪癖であり、相手の攻撃をうまくいなしたり、苦しい時間帯を無難に耐えしのいだりする「勝負強さ」や「賢さ」が見えなかった。その一方で、「近年のイングランド代表では最高クラスのパフォーマンス」と謳われたロシア戦の前半のように、勢いに乗れば眩しい輝きを放ったりもする。違う言い方をすれば、ひどく安定感を欠いているということだ。
要因の一つとして開幕前から指摘されているのが、今回のイングランド代表の「経験値のなさ」である。平均年齢25.4歳のスカッドは過去58年の同代表で最年少。40キャップを超える選手は4名しかおらず、高級紙『タイムズ』紙で解説を務める元アイルランド代表FWトニー・カスカリーノも、「経験が足りない。準決勝まで勝ち進めるチームには見えない」と言う。実際、大会前に同紙の執筆陣で行った「イングランド代表はどこまで勝ち進めるか?」とのアンケートでは、回答者12名中7名が「ベスト8」と返答。「ベスト4」は4名、「ベスト16」が1名で、「優勝」もしくは「決勝進出」と答えた識者は一人もいなかった。
ホジソンは前線の最適解を見いだすことができるか
本大会に突入するとユーロ予選でも採用した4−3−3に戻したものの、今度はケインとスターリングが不振と、指揮官も頭を悩ませている。バーディーとスタリッジを投入して厚みのある攻撃を奏でたウェールズ戦の後半の出来には可能性を感じさせたが、はたして指揮官は20日に行われる第3節のスロバキア戦でどのようなラインナップを送り込んでくるか。
開幕から2試合連続でBBCのMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれたウェイン・ルーニーのインサイドMF起用は、効果的なサイドチェンジや豊富な運動量で抜群の効果を生んでいるだけに、前線の編成が今後のカギを握ってくる。
他方、ウェールズはイングランド戦に勝利すればグループリーグ突破が決まったが、その願いは第3節へと持ち越しになった。ユーロ予選でウェールズがたたき出した8割強の得点に絡んだベイルへの依存度が極めて高く、チームの出来はレアル・マドリー所属の26歳にかかっているが、運動量豊富なアーロン・ラムジー、前後左右にパスを散らすジョー・アレンが中盤をしっかりと支えている。守備の要であるDFのウィリアムズが精彩を欠いているのは気掛かりだが、チームとして大崩れしない組織は出来上がっている。
接戦となった「兄弟対決」
敗れたものの、ウェールズとイングランドの差は急速に縮まっている 【写真:aicfoto/アフロ】
思い返せば、6年前のFIFAランク(2010年12月15日付)で6位につけていたイングランドに対し、当時ウェールズは112位に甘んじていた。しかし、ラムジーが「ここにきてイングランドとウェールズの差は急速に縮まっている」と語ったように、今回の接戦で彼の言葉が正しかったことを図らずも証明した格好だ。選手層やタレントの差でイングランドが一枚上手だったことは事実であるが、黄金世代とうたわれるウェールズが、若きイングランドを最後まで苦しめた見どころの多い英国対決であった。