ファンも味方も相手もイチローを祝福 P・ローズを抜いたその瞬間、球場では…
現地メディアも記録を特集
球場内でもピート・ローズの記録を超えたことが紹介された 【田口有史】
『ESPN.COM』は、イチローがローズに並んですぐに特集を掲載した。ジム・ケイプル記者が、“ローズがいうように日本のリーグはそんな低いのだろうか?”と疑問を投げかけ、イチローが日本時代に1試合平均1.3安打を放ち、メジャーでは移籍後10年間で1試合平均1.41安打をマークしていること。一方のローズは、どの10年間を切り取っても1試合平均1.3安打以上を打ったことはないといったデータを紹介し、イチローは日本時代よりもむしろメジャーで結果を残していることを伝えた。
そのことは、イチロー自身、日米通算3000安打を放った2008年にこう言っている。
「アメリカでのヒットのペースの方が早いんですよということを言われたら、言い返しますけどね。だから、日本の方がレベル高いんじゃないの、みたいなことは言えますよね。ペースが上がってしまっているので。それが武器だよね。落ちてて、試合数だけ多いからっていうのだと、ちょっと弱いけどね。そこはちょっと、誇りにしてるところ」
そういう事実も合わせ考えれば、イチローの日米通算記録を何らかの形で認めざるを得ない――と米メディアが考えるのも当然で、イチローが日米通算3000安打、4000安打に達した時とは明らかに違う空気が漂っていた。
打たれた相手投手も祝福
ローズが「日米通算安打は、大リーグ記録ではない。それで超えたというなら、おれのマイナーでの安打数を加えろ。それもプロのヒットだ」と強情に言い続けてきた。そのことは誰もが分かっているのに、頑にイチローの記録を認めようとしない。また、日本のレベルはマイナーレベルだと、言い続けた。そんなこともあってイチローも冷めてしまったよう。
かつて、ローズがタイ・カッブの通算安打記録を更新して、“ヒットキング”になった時の試合も取材していたある記者は言った。
「一言、おめでとうが言えないのだろか。ローズが最多安打記録を持っていることには変わりないのに、どうしてそんなに小さいことを言っているんだろう。日本の野球のレベルが上がっていて、メジャーとのギャップがなくなっていることも確かだ。それをリスペクトするような話ができないのは残念だ」
イチローは「どうしたってケチがつく」とも話したが、その中でしかし、ファンは総立ちとなり、打たれたロドニーもイチローを祝福すると、ショートのアレクセイ・ラミレスは拍手を送った。初回は、クリスチャン・イエリッチのヒットで生還すると、ダグアウトでもみくちゃになった。ケチがつこうが偉大な記録であることに変わりはなく、ファンも、相手選手も、味方の選手も、あのローズを超えた瞬間、一様にイチローを称えたのだった。
先に紹介した『ニューヨーク・デイリーニュース』紙はこうつづった。
「日本では盛り上がっていることだろう。そうなって当然だ。そうであるべきだ」