“魔の背番号”を背負う中日・谷哲也 持ち前の堅守で1軍定着なるか

ベースボール・タイムズ

崖っぷちから自己最高の成績

落合GM(奥)は04年の監督就任以降、「崖っぷち」の選手に「70」の番号を与えている 【写真は共同】

 谷に「背番号70」が回ってきたのは、落合氏がゼネラルマネージャーとして球団に復帰した13年のシーズンオフだった。小笠原道大の加入に伴い、プロ入りから6年間背負っていた「36」から「70」への変更を告げられたのだ。

 まさに崖っぷちの状態に立たされた谷だったが、ここで意地を見せる。14年、代打からチャンスをつかむと、プロ初打点を挙げるなど自己最多となるシーズン59試合(先発22試合)に出場。“魔の法則”を打ち破り、オフには無事に契約更新を勝ち取った。自身初のお立ち台で語った「人生を変えてやる気持ちで行きました」とのせりふが決して大げさでないことは、誰もがうかがい知れるところだった。

 しかし、さらなる飛躍を期待された15年は、けがが響いて出場したのはわずか1試合のみ。“魔の呪縛”が再び頭をよぎったが、減額制限いっぱいながらも辛うじて契約更新。だが、背番号70は新シーズンも変わらず。今季ここまで30試合に出場しているが、5月20日には登録抹消されて現在は2軍調整中。依然として、首の皮一枚の状態であることは間違いない。

課題の打撃を磨いて定位置確保へ

 谷の最大の長所は、捕手以外の内野の全ポジションをこなせる器用さにある。やはり生き残りをかけるすべはそこにあるだろう。事実、入団から9年間で記録した失策の数はわずか2つのみ。今季はもちろんのこと、三塁のポジションでは一度も失策を犯していない。先日の6月12日の西武戦(西武プリンス)で、三塁の守備に就いていた亀澤の送球ミスで試合を落としたことからも、堅実な守備が期待できる谷の必要性を感じずにはいられない。谷繁監督を含めた首脳陣も、谷の存在を改めて認識したはずだ。

 とはいえ、打撃面でのアピール不足も事実である。今季打率は1割9分(58打数11安打)。降格後の2軍での打撃成績でも25打数5安打の打率2割(6月13日時点)と苦しい状況にある。それでも本来は鋭いスイングから外野の間を抜く長打力を持っている。高い守備力とともに、バッティングでも本来の長所を取り戻せば、1軍での定位置確保の可能性もまだまだ十分に残っている。
 
 谷本人も、自身の置かれている“崖っぷち”の立場は自覚している。後半戦には故障の高橋周平も戻ってくる予定だ。その前に、自身の存在を再アピールしたいところ。谷が調子を上げれば、攻守においてチームの大きなプラスになる。“呪縛”は必ずや、解ける。主役にはなれないかも知れないが、この男の力は必要だ。1年でも長く。背番号70の懸命の戦いが続く。

(文・高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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