ハリル「決勝はレベルの高い試合になる」 キリンカップ ボスニア戦前の会見

スポーツナビ

強豪国は難しい状況でもコントロールできる

――監督は「勝つ文化」と言うが、日本は勝利が続いていることで、それが身についたと思うか?

 これはトライで、命令ではない。1試合2試合で「勝つ文化」ができたというわけではない。時間をかけ、トレーニングをしなければ。トレーニング中も、負けたときに冗談を言っている選手がいたので注意した。「なぜ君は勝っていないんだ」と。負けた時はトレーニングでもがっかりしてくれと。

 フットボール、テニスフットでミニゲームなどをやるが、負けそうな選手はすぐにつかまえて、ひとこと言う。そうしたちょっとしたトレーニングでも、メッセージは「勝て、勝て、勝て」だ。ただ、選手のキャラクターやメンタリティーもある。それから、組織にどう溶け込むかということもある。ただ、チームが勝利へと導いていけば、選手はついてくるし、強豪国はそういうものを持っている。

 特に強豪国は、難しい状況でも勝利に向けてゲームコントロールができる。バルセロナもレアル・マドリーもマンチェスター・ユナイテッドでも難しい状況、時間帯は来る。(マンチェスター・ユナイテッドで指揮した)アレックス・ファーガソンもそういうことを言っているが、彼がマンチェスター・ユナイテッドに勝つ文化を植え付けた。私もワールドカップ(W杯)を経験しているが、ドイツとやった試合でわれわれも難しい時間帯が来た。選手がパニックに陥った時間帯もあった。あと少しで勝つところまでいったが、勝利できず、ドイツが勝った。強豪国はそうしたものをコントロールできる。

 われわれはいつもトップのレベルでできるわけではない。ただチームのスピリットとしては、いつも「勝つ」という言葉が存在していなければいけないと思う。(就任して)1年2、3カ月経ち、試合の映像も何本見たか分からない。私が就任する前の、日本代表の試合もたくさん見た。前回のW杯も見た。ある時間帯は日本が相手をリスペクトしすぎているところがあった。私がアイデンティティーについて言ったのは、まず自分のことをリスペクトしなさい。その後に相手をリスペクトしなさいということ。それはこれまでと全く違うフィロソフィーだと思う。

 日本は戦略もレベルアップしなければならないが、本当に長くて難しいチャレンジだ。ただ私は合宿でしか選手に会えない。このあと試合の後、3カ月選手と会えない。皆さんは想像できないかもしれないが、3カ月後、何人の選手が覚えているか。彼らは紙を持って、これがわれわれのアイデンティティーだというのを忘れないでほしい。

 私自身もブルガリアに7点取るなんて、前もって分からなかった。皆さんがこれをどのように分析したか分からないが、われわれが取った点は、PKは別としても偶然はなかった。組織的に美しいアクションがあった。個人で3人、4人、5人を突破したわけではない。初日からずっとトレーニングしてきたものが、報われたのではないかと思う。特に攻撃のアクションにおいては、日本の長所が出た得点だったと思う。プレーが速く、パス交換も速く、ギャップに移動し、前のスペースを探し、フィニッシュのゾーンに何人も顔を出していた。それから、できるだけプレスをかけ、ブロックを高い位置に敷くのか低い位置に敷くのか、そして相手をどういった状況で防がないといけないか、ということが個人も組織も向上したのではないかと思う。

 1月から、スタッフが(海外の)いろんなところに行った。私はミランに行って、ケイスケ(本田)やユウト(長友佑都)と、ドイツでも各選手と食べながら話した。食べるために会ったのではないが、日本料理がだんだん好きになってきた。それは関係ないが。とにかく、ディスカッションをたくさんしてきた。イングランドではマヤ(吉田麻也)やオカ(岡崎慎司)に、それぞれにA代表ではこれをやってくれと伝えた。オカについてはすでに言ったが、レスターとA代表は違う。香川も本田もそうだ。クラブとは全く違う役割をしてもらう。香川がセカンドポストにジャンプしながら、ヘディングでゴールするのを想像できただろうか。トレーニングではシンジにずっと言ってきた。ディスカッションとトレーニングを含めて、このような結果になったのではないか。

 ただ、日本が本当に強豪国になったかというと、まだまだ遠い。明日、シンガポール戦と同じような現象が起きるかもしれないが、私は楽観的でいられる。いい道を歩いているのではないかと思う。特に国内組はハイレベルが何かを即座に理解しなければいけない。まず、トレーニングでも彼らはずっと長いインテンシティー(強度)についてこられない。国内組のフィジカル状態を高めておかなければならない。浅野(拓磨)、大島(僚太)、ユウキ(小林祐希)の様子は本当に満足している。皆さんがご存知のように、浅野はボスになった。勝手にPKを取って蹴った。20歳でボスになって、すぐにできるなんて信じられない。

――ブルガリア戦の2失点について分析をしたというが、DF陣は反省していたが、具体的に原因は何だったと考えるか?

 簡単に分析すると、デュエルに2回負けた。直接的にフィジカルパワーで負けた。もちろん、そこで疲労が見られた状態だった。つまり、このレベルでフィジカル的に準備できていない人間がいたということ。そこは伸ばさなければならない。海外組も全員が先発を奪っているわけではない。90分プレーできない者は、フィジカル的にトップではいられないということ。まずしっかりコンタクトを取って、90分プレーできなかったら、なぜかと聞く。そして、個人のトレーニングをするように言う。爆発的なスピードトレーニングを試合と同じ負荷でやってくれと。ただどのようなトレーニングも試合には勝らない。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦はおそらく空中戦はかなり厳しくなるだろう。185センチ以上の選手はわれわれにはいないが(編注:実際には吉田が189センチ)、彼らにはたくさんいる。そこはわれわれにとって問題になってくる。空中戦でどのように対応するかが、テーマになってくるだろう。デンマークにも大きな選手がたくさんいる。日本代表が伸ばさないといけないことがあるとすれば、空中戦にどう対抗できるかということ。そこもトレーニングしていかなければいけないと思う。

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