蛯名正義 いざ24度目のダービー 「良い競馬と、運と、皆さんの後押しで」

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貫禄の最終追い切り

12日の2週前追い切りでのディーマジェスティ(撮影:佐々木祥恵) 【netkeiba.com】

 5月5日、ディーマジェスティは、助手を背にウッドチップコースで、皐月賞後初めての時計を出している。

 翌週12日に併せ馬での2週前追い切りを終えたのち、二ノ宮調教師は「疲労回復が早く、思い描いた通りのメニューで順調な調整ができている」と話をしている。

 1週前追い切りでは「オーバーペースにならないように」という二ノ宮師の狙いのもと、ディーマジェスティには助手が騎乗し、併走馬の鞍上に蛯名の姿があった。

「(調教に乗っている助手は)右手前、左手前と上手に手前を替えるようになったし、なめらかに走るようになったと言っていました」

 追い切りを終えたのちの取材では、皐月賞後の短い期間で馬が成長している旨を蛯名はコメントしている。

 そして「元々大人しい馬です。乗りやすくて、余計なことをしないですし、余計なところに力を使いません。しっかり走って、あとはリラックスしている。厩舎のしつけも良いのでしょうけど、非常にクレバーな馬です」と、パートナーを褒めたたえた。

25日、蛯名騎手が跨って最終追い切りをこなした(撮影:佐々木祥恵) 【netkeiba.com】

 5月25日、美浦トレセンは通常より報道陣の数も多く、ダービー週の賑わいを見せていた。その独特の雰囲気の中、蛯名を背にディーマジェスティの最終追い切りがウッドチップコースで行われた。後ろから相手を追いかけ、伸びのある力強いフットワークで4コーナーを回ると、直線ではあっという間に併走馬を突き放して、皐月賞馬の貫禄を見せつけた。

「時計は多少速かったですけど、内側を回ってきましたから。これだけやれたのだから、順調ですし、良かったと思います」と蛯名は最終追い切りを評価した。

チャレンジャーの気持ち、気負ってはいない

 大一番に向けて馬の仕上がり具合も良く、ダービーへの期待が高まるばかりだ。しかし報道陣に囲まれて言葉を選びながら話す蛯名騎手は、淡々としていた。

「この馬が抜けているというふうには思わないですけど、皐月賞でこちらが考えていた以上に走ってくれて、ある程度やれるという手応えを掴めたのは良かったです。それまでは、強いメンバーとやっていなかったので、どのくらいやれるかもわからなかったわけですから。

 他の陣営もここに向けてもう一段階ギアを上げてきますし、あとはこの馬の良いところが出せるようにですね。チャレンジャーという気持ちですし、あまり気負ってはいないです。相手関係についても、気にしても仕方ないですよね。これだけ力が拮抗してくると、あとは運だと思います。どの陣営も、その運を引き寄せられるかどうか……」

 蛯名騎手の口から出た「運」という一言。22年連続、24回目のダービーに臨む蛯名騎手だからこそ、特に「運」という目に見えない力を実感しているようだ。

「これまでも勝ちたいという気持ちはいつも持ち続けていましたし、それに向けて一生懸命やってきました。それでも勝たせてはもらえないのがダービーです」

 静かな口調ながら、実感がこもっている。

「まずは無事に出走することですね。出ることがまず第一なので、そのあとはこの馬の力を出せるような競馬をして、運を頂いて、さらに皆さんの後押しがあれば、もうワンパンチきくと思います」

 再び、蛯名騎手から「運」という一言が出た。かつて「皐月賞は速い馬、ダービーは運の良い馬、菊花賞は強い馬が勝つ」とよく言われていた。その言葉通り、ダービーはどのレースよりも見えざる力によって、左右されるものなのだろう。

ダービーでも再び歓喜のガッツポーズは見られるか(撮影:下野雄規) 【netkeiba.com】

 蛯名騎手にとってダービーとは? と問われると「これが競馬でしょうね」と即答して、さらに続けた。

「僕だけではなく、生産者をはじめ、競馬に携わっている人すべてが、ダービーに始まってダービーに終わるというように、ダービーを中心に回っているのだと思います」

 馬の能力も騎手の手腕も既に証明済みだ。あとは運を味方につけるだけ。栄光のゴールはすぐそこにある。

(文中敬称略)

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