ファンの意見も二分するベンゲルの功罪 プレミア優勝から遠ざかるアーセナル
来季は積極的なFWとCBの補強を
ウェルベック(中央下)が膝に全治9カ月のけがを負ったこともあり、ストライカーの補強は必須だ 【Getty Images】
補強対象としては、5月8日の第37節マンチェスター・シティ戦(2−2)でダニー・ウェルベックが膝に全治9カ月のけがを負ったこともあり、ストライカーの優先度が高い。そうでなくとも、リーグ戦でシーズン15点前後が精いっぱいのオリビエ・ジルーが、センターFWのファーストチョイスでは心もとない。ジルーには大一番で簡単なチャンスを逃す悪癖もあり、昨年11月のトッテナム戦(1−1)ではノーマークだったボックス内でヘディングを外し、今年1月のリバプール戦(3−3)では3メートルの距離から無人のゴールを前に決め損ねている。
メディアでは新ボランチとしてレスターからエンゴロ・カンテ引き抜きのうわさがあるが、守備面では新センターバック(CB)獲得を推したい。ベンゲルはリーダー格のローラン・コシエルニーの相棒にガブリエウを好むようになったが、両者は共に機動力に依存するタイプで、そろってフィジカル不足。衰えつつあるペア・メルテザッカーに変わる強さと高さの持ち主が最終ライン中央に欲しい。頼れる壁が手前にあれば、マンC戦でもケビン・デ・ブルイネの1発を浴びたように、チェフがチェルシー時代には記憶のない頻度でエリア外からシュートを決められる状況も改善されるのではないだろうか――。
まだアーセナルには進化が期待できる
来季、ベンゲルはアーセナルの指揮を執っているだろうか 【写真:ロイター/アフロ】
リバプールを追われたブレンダン・ロジャーズはキャリア再生が先決。ジョゼ・モウリーニョやディエゴ・シメオネは、物議を醸す言動と堅守ベースのスタイルがアーセナルには向かない。アヤックスのフランク・デ・ブールという説もあるが、であれば同じオランダ人監督でもプレミア実積のあるロナルド・クーマンの方が妥当に思える。現サウサンプトン指揮官は、攻撃の理想と守備の現実がバランス良くブレンドされたチームを作る。ただし、バトンタッチは来季終了後でも遅くはない。
誰よりもベンゲル自身がそう思っているはずだ。問題のノリッジ戦、実際のスタンドの声は、退任を求めるファンに自粛と翻意を求め、「アーセン・ベンゲル、あなたしかいない!」と歌うサポーターの声が勝っていた。抗議は失敗だったのだ。支援を耳にしたベンゲルは試合後、「常に全力で仕事に当たってきたが、不足があったのなら(ファンに)詫びたい。今後、より一層の努力を続ける」と語っている。
その指揮官が、過去に進退を問われて口にした言葉には、「もはや自分にはチームを進化させられないと感じたら身を引く」というものもある。その指揮官が「今後」への意欲を示しているのだから、まだアーセナルには進化が期待できるということだ。かつては『IN ARSENE WE TRUST(われら、アーセンを信ず)』の弾幕の下に心を一つにしていたアーセナル・ファンは、今一度ベンゲルを信じ、一致団結して来季のプレミア優勝争いに挑むべきだ。