データが示すフィッカデンティサッカー 己のスタイルで古巣・FC東京に挑む
FC東京から鳥栖の監督へ
FC東京との古巣対決に臨む鳥栖のフィッカデンティ監督。目指すサッカーはデータにも表れている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
その鳥栖を今シーズンから率いるのが、14年からの2シーズンをFC東京で指揮を執ったマッシモ・フィッカデンティ監督だ。初年度を9位で終えて、15年シーズンは4位まで順位を上げたが、あと一歩のところでリーグタイトルもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場も逃した(その後、ガンバ大阪と浦和レッズの天皇杯決勝進出に伴う繰り上がりで、ACLプレーオフ出場権を獲得)。FC東京での指揮はそこでついえたが、15年の年末、16年シーズンより鳥栖の監督に就任することが決まった。
FC東京が見せていたしっかりとした守備からの攻撃スタイルは、一部のサポーターの間では、堅守速攻をうたう鳥栖のスタイルに合うのではないかとささやかれてもいた。
鳥栖の16年シーズン指導日となった1月16日、新体制発表の席でフィッカデンティ監督は開口一番「まずは守備から」と語り始めた。北部グラウンド(鳥栖市)で身体作りを行い、沖縄県読谷村キャンプに入ってからは攻守における約束事の確認を徹底。トレーニングマッチは数試合に抑え、ピッチ全体を使ったトレーニングを主体に“フィッカデンティサッカー”の浸透を図った。それは、ポゼッションしながら攻める形のサッカーである。
チーム始動から開幕までの期間は短かったが、フィッカデンティの目指すサッカーの萌芽はすでに数値として表れている。
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また、後方から中盤へ、中盤から前線へのパスが増加しており、パスの成功率も昨シーズンよりも7.9%アップ。ツータッチ以上のパスも192本から295本と100本以上増えている。昨季までの豊田を狙った攻撃に加え、細かなパスをつないでボールを動かすことで、攻撃のオプションが増えたと言えるのではないだろうか。
今シーズン、鳥栖が推し進めているサッカーは、データ上は間違ってはいない。得点こそ取れてはいないが、高いポゼッションとエースの存在で、フィッカデンティの目指すサッカーはできていると言える。あとは、昨シーズンに比べて減っている得点を増やすことだが、「クオリティーを上げるだけ」とフィッカデンティは言い切る。「今のチーム内で一番決定力を持っているのはトヨ(豊田)。彼だけではなく、他の選手も上げないと……」と指揮官が語るように、選手個々のクオリティーさえ上がれば、得点数も増えてくるだろう。
フィッカデンティのサッカー観
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さらに、今季の鳥栖の失点数は、第8節終了時点でわずかに「8」(1試合未消化)。2位の川崎フロンターレが「10」であることからも、守備においては機能していることが見て取れる。1試合平均の失点数は昨シーズンの1.59から、今季は1.14に減少。昨シーズンまでの「堅守の鳥栖」のイメージをさらに強化していることになる。ちなみに、15年シーズンのFC東京の失点は18チーム中3位で、年間順位2位でフィニッシュしたG大阪や3位の浦和よりも少なかった。ここでも、フィッカデンティのカラーが出ている。
対戦相手の枠内シュート率も、昨シーズンの40.6%から29.7%と10%以上減少。フィッカデンティがFC東京を率いていた際、ウノゼロ(1−0)での勝利が多かったが、今期の鳥栖はそのウノ(1点)が取れないがゆえに黒星を重ねている状況と言える。