アルバレスが戦慄のKO劇で初防衛 ゴロフキンとのミドル級頂上決戦が実現か?

杉浦大介

ウェイト、報酬など実現への問題は多数

ゴロフキン戦実現への課題は多数あるが、ボクシングファンにとっては是非実現してほしいところだ 【Getty Images】

 もっとも、試合直後、湧き出るアドレナリンに後押しされた発言のすべてを真に受けるべきではないのだろう。22連続KO勝利を続けるゴロフキンは脅威の存在。カーン相手ならカネロに明白なサイズ・アドバンテージがあったが、“GGG”(ゴロフキンのニックネーム)はキャリアを通じてミドル級で戦ってきた選手だ。そんな背景もあって、ゴロフキンと対戦するとしても、カネロとその陣営は160パウンドのミドル級リミットではなく、155パウンドでの試合実現を要求してきた。

 今後、両者の交渉がついに開始されるとして、ウェイトの問題はどうなっていくのか。商品価値ではカネロが大きく上回っている現状下で、報酬分配はどうなるのか。オスカー・デラホーヤが率いるゴールデンボーイ・プロモーションズは、“金のなる木”であるカネロを、“全階級を通じて最も恐れられている選手”と呼ばれるゴロフキンにぶつける勇気が本当にあるのか。

 それらの問いへの答えは、明日以降に催される話し合いの経緯を待ってみなければならない。ただ……両陣営にも様々な思惑はあるだろうが、現在最高のマッチアップであるカネロ対ゴロフキン戦は、可能な限り早く実現させて欲しいと願わずにいられない。

「160パウンドのリミットで戦うよ」と公言

 ボクシング界の新センセーションとなったゴロフキンと、25歳にして現役最高の人気ボクサーになったカネロ。2人の激突は、NFLのダラス・カウボーイズの本拠地であるAT&Tスタジアムに7〜8万人の観衆を集めるほどの大イベントになる。何より素晴らしいのは、昨年5月2日のフロイド・メイウェザー(アメリカ)対マニー・パッキャオ(フィリピン)と違い、エキサイティングな内容、結末がほとんど約束されていることだ。

 浮世離れした金額が飛び交った一方で、去年の“世紀の一戦”は凡庸な試合内容でファンを落胆させてしまった。米国内には「もうボクシングのPPVを買うつもりはない」と公言するスポーツファンも少なくない。そんな今だからこそ、カネロ対ゴロフキンの分かりやすさには計り知れない魅力がある。

「ゴロフキン、どこにいる? 明日の朝の電話に出るように」

 試合後の会見中、デラホーヤがスペイン語放送の取材を受けていたゴロフキンにマイク越しにそう呼びかけるシーンがあった。現役時代は“ゴールデンボーイ”と呼ばれプロモーターは、近年は「ファンを喜ばせるファイトを組みたい」と盛んに公言してきた。そして、カネロもこの会見中についに「160パウンドのミドル級リミットで戦うよ」と公言した。だとすれば――。

 ゴロフキン対カネロ戦は、ボクシングファンへの贈り物。願わくば今年の9月、どんなに遅くても来年の5月に挙行しなければならない。瞬きもできない展開が確実のビッグファイトを、世界中のファンが待ち受けているのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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