熊本出身・正代が台風の目になる活躍を 元若の里、西岩親方の夏場所展望
先場所は13勝2敗と好成績を挙げ、夏場所では綱取りも期待される稀勢の里 【写真は共同】
稀勢の里は連覇で綱取りを!
稀勢の里に優勝してほしかったです(笑)。同じく12勝3敗と好成績を残した豪栄道もそうですが、初場所で琴奨菊が優勝したことによって、先を越された悔しさがあったと思います。それがバネになって、春場所の活躍につながったのでしょう。ただ、稀勢の里本人は13勝できた喜びよりも、やはり目の前まで来ていた賜杯を手に入れられなかった。そちらの悔しさの方が大きいでしょう。
――では、念願の賜杯への課題は?
稀勢の里は白鵬と対戦するまで1敗も許されません。頭一つ抜ける大横綱がいるわけですから、直接対決を最低でも同じ成績、あるいは上回った状態で迎えたいですね。
稀勢の里は今場所優勝すれば「横綱」という声も聞かれますが、私個人的にはまだ早いと思います。過去には魁皇関(現浅香山親方)は5回優勝しても横綱になれず、貴乃花関(現貴乃花親方)も7回目の優勝でようやく横綱に昇進しています。稀勢の里はまだ1回も優勝していないのに綱取り、というのはまだ早い。やはり1回、2回と連続制覇して胸を張って横綱に昇進してほしいですね。
新関脇・琴勇輝の「ホウッ」は支度部屋で
まず琴勇輝は左膝の大けがを克服しての昇進、これは立派の一言に尽きます。私も現役時代は膝のけがを経験しているのでよくわかります。彼は元気のよい突き押しを武器にしていますが、その威力も番付を上げるとともに力強くなっています。今までの琴勇輝だと思って、横綱、大関陣も対戦すると痛い目にあうでしょう。
ただ、立ち合い前、腰を割ったタイミングで「ホウッ」を会場に響くように声を出す動作、これは個人の意見ですが、考え直してほしいですね。立ち合いの手つきもしっかりと両手を土俵につかなくてはいけないのですが、立ち合い成立しているのか、ギリギリのところがあり、取組後の懸賞金の受け取り方も基本と異なる部分があります。大相撲は初日の前に土俵祭りを行って神様に来ていただき、千秋楽の後には神送りで行司さんを胴上げすることで送り出している、すなわち神様の前で相撲をとる神事、という側面もあります。
「ホウッ」といった声出しやパフォーマンスに近いルーティンの動作は支度部屋でできないのか、と思いますね。できれば一歩出て花道から控えに座り、土俵に上がるまでは必要以上のものはせずに戦ってほしいですね。
――勢はどうでしょう?
ここ数年は10勝前後の大勝ちと10敗前後の大負けを繰り返していますね。194センチ、165キロと白鵬と遜色ない体つきですが、白鵬との違いは立ち合いの低さです。白鵬は192センチと長身にも関わらず、174センチの豊ノ島よりも低い立ち合いをします。当然身長が高くなれば腰が高くなるのですが、白鵬はそれが逆。足首、膝、股関節が柔らかくて強靭なので、腰が低くなります。
同じような体型、同じ右四つの取り口の白鵬というお手本がいるので、勢は所作だけでなく、そういったところもまねていけば、間違いないでしょう。