新十両・宇良が角界の常識を変える 低い立ち合いを武器に居反りが出るか!?

荒井太郎

本人曰く「負け続けの相撲人生」

30日のに十両昇進が発表され多くのメディアが集まった 【写真は共同】

 相撲界に革命が起きるかもしれない。3月場所後に行われた新十両会見には50人ほどの報道陣が集まり、テレビカメラもズラリと並んだ。横綱や大関ならともかく、新十両昇進にしては極めて異例な光景は注目度の高さを物語っていた。

 172センチ、120キロと小兵の宇良和輝は、関西学院大出身初の力士として1年前の3月場所で初土俵を踏んだ。学生時代は背中越しに相手を持ち上げて裏返す「居反り」の名手として、その名が一部の間で知られる存在だった。プロ入り後はいつこの大技が出るのか、その瞬間を逃すまいと報道カメラマンは前相撲以来、宇良の取組になると土俵下に集まるが、いまだ“披露”はされていない。

 所要わずか7場所での関取昇進は横綱・旭富士(現伊勢ケ浜親方)と並んで史上4位タイのスピード出世。これまでの通算成績も38勝4敗と勝率は9割を超えるが、本人は「負け続けの相撲人生だった」と振り返る。

 相撲を始めたのは4歳のとき。力士OBが主宰する道場の稽古は厳しかった。常に「辞めたい」と思っていたが、熱心な親や指導者の手前、なかなか言い出せなかった。その代わり、相撲の基礎は徹底的に叩き込まれ、鍛え抜かれた強じんな下半身はのちに大きな財産となる。

レスリングをあきらめ高校から相撲一本

 ひたすら押し相撲を磨いていったが、いかんせん体が小さいことから稽古ではまったく勝てなかった。そんな時、テレビで見たレスリングに魅せられた。

「階級があるレスリングなら、勝てるんじゃないか」

 小3から地元のレスリングクラブに通い始めると、小4のときには全国2位に輝いた。小学校時代は相撲とレスリングを並行してやったが、中学になるとレスリングに軸足を置いた。しかし、レスリングの実績では高校の推薦はもらえず、京都の鳥羽高校では相撲一本に打ち込んだ。

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

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