武豊の手腕にサブちゃん泣いた、歌った! キタサンブラック4cm差で天皇賞・春V

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すべて天才が思い描いていた通りに

接戦となったレースは、ハナ差わずか4cmで決着した 【スポーツナビ】

「内枠がほしいなと思っていたので、1枠1番は良かったですね。ただ、ゲートの駐立が得意な馬じゃないので、特に位置取りは決めずにいました。でもいいスタートが切れましたし、ゲートを出てからは迷いはなかったですね」

 武豊の言葉通り、キタサンブラックは好発を切るとそのままスッと先頭へ。無理に競りかけてくる馬もなく、最内枠を利したコース取りでペースを握ると前半1000メートルの通過は1分1秒8、半マイルは1分38秒3、そして2000メートルが2分3秒5。

「すべて思い描いていた通りにレースを運べましたね。リラックスして走ってくれましたし、4コーナーに向くまでいい形でした」

 天才自らも納得したこのペースメーク。こうなると後続は手も足も出ず、4コーナー手前から仕掛けてきた1番人気ゴールドアクターの方がむしろ手応えは悪い。そして、キタサンブラックが最後の直線で一気に突き放しにかかるが、ここで思ってもいなかった伏兵が突如として台頭する。それがキタサンブラックの後ろで虎視眈々と脚をタメていたまさかの8歳馬カレンミロティックだった。

 猛然と襲い掛かってくる古豪の前に、いったんは後れを取ってしまう。末脚の勢いから見ても、キタサンブラックはここまでかと思われた。だが……

「まだ(手応えが)残っている感じがしたんです。差し返せるな、と」

 武豊のゲキに再び火がついたキタサンブラックは、逆に今度はカレンミロティックを内から追い詰める。そして、激しいつばぜり合いの末に、4センチだけ競り負かしたところがゴールだった。

「たぶん、勝ったんじゃないかと思いましたが、ハッキリとは分からなかったので着順が出るまでドキドキしていました(笑)。北島さんと抱き合ったときにはお互いに言葉にならない感じでしたね」

 武豊自身にとっても、これが2006年ディープインパクト以来となる天皇賞・春V。『平成の盾男』もこの10年、栄誉からは遠ざかっていた。それだけに、「天皇賞はどうしても勝ちたいと思っていました。歴史や重みのあるレースを北島オーナーの馬で勝てたことは本当に嬉しいですね」、表彰式で語ったこの言葉には10年分の思いも込められていたのだと思う。

キタサンブラックとサブちゃんの夢は広がるばかり

キタサンブラックの次なる展開を、北島三郎さんはどう考える? 【スポーツナビ】

 演歌と競馬のレジェンドがタッグを組み、そして、競馬界の最高峰である天皇賞・春を制覇。一見、出来すぎた話ではあるけど、サブちゃんと武豊ならそれがまったく嫌味にならず、最高に“絵”になるのだから、これがスター性というものなのだろう。

「馬主をして50年以上になりますが、実は昔、偶然にも自分が持っていた馬の中に“タケユタカ”という馬がいたんです。その子供たちがずいぶんと走りましてね、だから武豊さんには機会があったら自分の馬に乗ってもらいたいと、ずっと思っていたんです」

 そんな北島さんの思いに、北村宏司の負傷離脱により大阪杯に続いて手綱が回ってきた武豊も「大役だと思っていた」という。その大役を見事に果たしたことで、2016年の天皇賞・春は競馬史に燦然と残る1ページとなった。

 また、チャンピオンホースを数多く生み出してきた菊花賞、天皇賞・春の伝統GIをダブル制覇したことで、今後キタサンブラックが背負う“大役”もますます大きくなってくる。「まずひとつ、何かを成してから」という北島さんの方針により、この後の具体的な目標は決まっていないが、順調ならばグランプリ宝塚記念、その先には春秋制覇を目指す天皇賞、いや、海外遠征だって可能性がないわけではないだろう。キタサンブラックとサブちゃんの夢は広がるばかりだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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