代表強化担当者に聞く日本ラグビーの未来 19年のW杯に向けたプランと展望
トップリーグのカンファレンス制も検討中
後半は村上氏(左)の進行のもと、質疑応答が行われた 【スポーツナビ】
――やっとサンウルブズが1勝した。ここまで勝てなかった理由は何なのか。
まず、スーパーラグビーが連戦なため、どこでピーキングを上げていくかが難しいシーズンでした。一つは、どのようにトップリーグと連携を図るかだと思います。トップリーグの各HCと連携をとって、どうピーキングを持っていくのかを考えるのがまず重要だと思います。
もう一つは、サンウルブズのようなチームを2チームくらい持たなければ強化はできません。そのためには、来年の契約選手をできるだけ多くしなければいけない。予算の問題などもあるが、フル契約とハーフ契約の選手もいるので、ハーフの選手を多く持つなども考えられます。もちろん、ここには学生や若い選手にスーパーラグビーを経験させたいという意図があってのことです。
――ずばり、協会のふところ具合は?
ぜひご支援いただければと思います(笑)。非常に厳しいですね。強化は本当にお金がかかりますし、エディーさんが全部使っちゃったので(笑)。どこの国もW杯の翌年は大変なシーズンだと思います。
――若い世代と代表をつなぐ育成プランはありますか? 大学は大学同士で試合をしていて、なかなかレベルの高い試合を経験できない問題がありますが。
まず、帝京大の1強時代は大学リーグにとって大きなことです。どのように(有望な選手を)分散させるかが大事だと考えています。
あとはあくまでも私個人の考えですが、ポテンシャルがあり将来、世界のトップ選手と対等に戦えるような選手は、トップリーグと大学リーグで2重登録をできるようにするなども考えなくてはいけないと思います。少しでも早いタイミングからトップレベルでプレーできるような環境づくりも強化の一つだと思います。ただ、これは採用の関係にもなります。1年生、2年生がトップリーグに行くのは弊害になる可能性もあります。そういうことも踏まえて考えていきたいと思います。
――ジェイミー・ジョセフの目指すラグビーとエディー・ジョーンズのラグビーとの共通点や相違点は?
まずはどちらも厳しいことですね。今回ジェイミー・ジョセフを選んだ理由もそこにあります。この前も会話をしていた時に、「この選手はハートが弱いね。僕とは仕事ができない」と即答するような厳しさを持っている指導者です。
ラグビー的には、オーストラリア(=エディーの出身地)とニュージーランド(=ジェイミーの出身地)の違いがあると思います。コーチングや、練習などをきっちり時間や形にはめていくオーストラリア方式と、選手の判断などを尊重しながらゲームを作っていくニュージーランド方式ですね。
――トップリーグの強化について。チーム数の増減は検討していますか?
議論されるところだと思いますが、現時点では減らさない方がいいと考えています。日本のラグビーの現状を考えると、減らすことによって撤退するチームが出てきたりなど、負の要素が考えられます。バランスをしっかりと考えなければいけないと思っています。
ただし、来年度の試合日程も選手のコンディションを考えたら、16チームでカンファレンス制度にするなどを検討しています。年間予算を考えると、10試合だけだったらチームを持つ必要がなくなってしまいますので、トップリーグの試合を10試合〜13試合ぐらいに抑えられるようにしたいと個人的には考えています。
――それは地域で西と東に分けたり、あるいは実力別に1部2部にしたりとかですか?
一番分かりやすいのは、単純に8チームずつに分けて総当たりで7試合をやって、そのあとに上位リーグをやったりだとか。その上で選手のコンディションを考えながら、日本選手権などをどうするのかだと思います。
――秩父宮ラグビー場が改修工事で何年間も使えなくなるという話がありますが、その間の対応をどのように考えていますか?
これはわれわれの範疇ではない話なのですごく難しいのですが、少しでも長く秩父宮を残してほしいと思っています。まだ正式には決まっていないようですが、もし改修するのであれば最後の最後まで使えるようにしてほしいです。そして、使えなくなったら、代替えのスタジアム、例えば新国立競技場を早く使えるようにしていただきたいというのはあります。
ただ、ここにはいろいろな駆け引きがありますので、そこは察していただければと思います(笑)。
日本のターゲットはスコットランド
今のところそう聞いています。ただ、できるだけ日本でやりたいですね。あと、なるべく時差のないカンファレンスでと思っていますが、いかんせんまだ入ったばかりの新参者なので……。
ただ、ハイランダーズなんかもサンウルブズと同じような長距離移動をしながら試合をしているようです。いきなり暑いところで試合をしてパフォーマンスを発揮できなかったりと。そういう意味では、日本だけでなくスーパーラグビーはハードな環境で結果を残さなければいけない世界最強のリーグだと思います。
――日本代表がターゲットとする国はどこでしょうか?
(W杯で)前回以上の結果を残すという意味では、スコットランドやイタリアに勝てるようになりたいです。ただ、スコットランドはめちゃくちゃ強いです。この前U−19日本代表がスコットランドに初めて勝利しましたけれども、やっぱりターゲットはスコットランドです。あとはイタリア、アイルランドなどにまんべんなく勝てるようにならなければいけないと思っています。
――海外でプレーしている選手をサンウルブズに呼ぶようなことも考えていますか?
そうですね。純粋にサンウルブズを強くすることが日本代表の強化につながると思っています。
――来年のサンウルブズと日本代表の選手重複は何パーセントくらいになりますか?
可能な限りそろえなければいけないと考えています。一方で結果を残さなければいけないという意味で、サンウルブズが勝つためのメンバー選考もしていかなければいけない。ただ、なるべく19年の(W杯に出場する可能性がある)選手でそろえたいという思いはあります。
――スーパーラグビーでは激しいプレーが見られるが、日本はローカルルールにこだわり過ぎているのではないでしょうか?
ご指摘の通り、日本はあまりにもフェアにやりすぎているというのはあると思います。ただ、トップリーグだったら反則だというプレーもスーパーラグビーでは見られます。ただ、そういったことにもなるべく対処できるようにしていきたいです。
――トニー・ブラウンを呼ぶことができますか?
呼びたいです(笑)。ただ、彼もいろいろな契約があります。ここで話すとうまくいくこともうまくいかなくなるので。よく分かりません(笑)。