前田健太、3戦連続好投で評価上昇 適応能力の高さでチームに溶け込む

鈴木良枝

メディアも実力を評価

前田はチームにも溶け込み、適応力を示した 【Getty Images】

 大型契約ではなく、異例の出来高制という契約。しかし、当初から評価が低かったわけではない。第3回WBCでの前田の投球を見て、サンフランシスコの記者たちの中には、実は田中将大(現ニューヨーク・ヤンキース)よりも前田を高評価した記者もいた。

「あのスライダーはすごい。マエダはアメリカにくるのかい?」と何度となく聞かれた。

『オレンジ・カウンティ―・レジスター』のビル・プランケット記者は前田がドジャースと契約した時にこう語った、「ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)や田中のような剛腕ではないけれど、三振を取れて四球を出すことが少ない。コントロールの優れたピッチャー」

 ロサンゼルスの記者に話を聞くと、多くがマエダの適応能力の高さを評価した。

『ロサンゼルス・タイムズ』のアンディ・マックロ―ン記者は「スプリング・トレーニングから見てきたが、アドバイスをもらいながら中4日のスケジュールをスムーズにこなしている。シーズンに入っても自分のピッチングができているし、彼はかなり適応できているよ」

西海岸を離れる今後が正念場

 適応能力が高いのは野球だけではなく、環境や文化の違いにも適応力を見せている。

 ある日のクラブハウスでは、前田はチームのエース、クレイトン・カーショーと楽しそうに談笑していた。最初の2戦でバッテリーを組んだA.J.エリスとはロッカーが隣同士という事もあり、よく話をしている。積極的にチームメイトの輪に入り、コミュニケーションを取って、すでにチームに溶け込んでいる様子がうかがえる。

「チームメイトもよく話しかけてくれるし、ドジャースに来て良かった。楽しく野球ができている」という本人の言葉からも見てとれる。そしてチームメイトも前田の実力を認めている。

 デーブ・ロバーツ監督は前田について「素晴らしいピッチャーだということは知っていた。ゲームをつくることができるし、多様な場所に異なるボールを投げることができる。ランナーを背負っても、自分のピッチングができる。つまりそれはゲームに勝つためのチャンスを持っているということ。ドジャースに来てくれて本当に良かったよ。この3試合は期待を上回る働きだね」と語った。監督の信頼も着実につかんでいる。

 登板するたびに評価も人気もうなぎ昇り。開幕から2週間はすべて西海岸での試合。前田にとってはこれからが連戦の続く厳しいスケジュールを経験することになる。ロード先では時差、湿気や気温という気候の違いに対応しながら、中4日のローテーションをこなしていかなくてはならない。こういった要因に加え、対戦が増えれば増えるほど相手に研究されるようになる。その時、どのようなピッチングができるか。

「1年間しっかりとローテーションを守って、ドジャースの勝利に貢献したい」と前田は語る。これは監督もチームもファンもみんな望んで期待していることだろう。

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著者プロフィール

サンフランシスコ在住。テレビ局勤務。スポーツリポーター、AP、コーディネーター。高校野球の監督だった父親の影響で高校・大学では野球部のマネージャーを務める。大学時代よりプロ野球やMLB中継に携わる。テレビ局のスポーツ局での勤務を経て、その後拠点を米国に移す。現在はサンフランシスコ・ジャイアンツやサンフランシスコ49ersなどスポーツの取材を中心に行うほか、コーディネーターとして幅広くテレビ番組の制作にも関わっている。

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