NFL入りが期待されるアメフト選手 庄島辰尭、日本人未踏の地での挑戦

永塚和志

激しい競争 レギュラー獲得へアピール続く

庄島(58)と会話するエイドリアン・クレム攻撃ラインコーチ。クレムコーチも庄島を評価している 【永塚和志】

 紅白戦に向けて、3月29日からUCLAチームの春の練習が始まった。現時点で選手の数だけでも100人以上からなる大所帯。当然チーム内での競争も激しい。勧誘を受けて入部したとは言っても、庄島が先発の座を手に入れるのは容易ではない。その認識は当人にも当然あり、試合と同様に実践形式で行われるスクリメージ練習の際には、自身の出番ではない時でもレギュラークラスの選手たちがプレーする後方で、足の運び方や手や身体の使い方などを確認する場面もあった。

 元NFL選手で、現在は同校で攻撃ラインコーチを担うエイドリアン・クレムは、庄島自身がUCLAに来るにあたって、「初めはバックアップ(控え)の立場からポジションを奪っていかねばならないことをよく理解している」と言う。一方で、「非常に頭がよく、センターというポジションということもあってチームメートをよく引っ張っている」とその姿勢に感心する。

 庄島自身も「アピールしていかなければいけない立場なので、後ろにいてはだめ。いつ自分に出番が来ても自分がどうすればいいか意識しながらシミュレーションしています」と、フィールド上では大人しい日本人の側面よりも、自らをどんどん売り込む米国人的なところを出している様子だ。

 NFLのアトランタ・ファルコンズなどでも指揮官を務めたことのあるジム・モーラヘッドコーチは庄島の「熱意とエネルギー、積極的にフィールドへ出てプレーをしようとする姿勢が好きだ」と賛辞を送る。

 モーラが就任した12年までは勝ち越すのにも苦戦するシーズンがしばらく続いたUCLAだが、彼が来てからは昨季まで4年連続で勝ち星が上回っている。同校が所属するリーグ「パシフィック12カンファレンス」は強豪ぞろいだが、将来のNFL選手候補でクォーターバックのジョシュ・ローゼンを中心に16年シーズンへ向けて周囲の期待度は高い。

NFL入り期待も本人は大学生活に集中

庄島には、モーラヘッドコーチ(写真)も賛辞を送るほど、周囲の期待度は高い 【永塚和志】

 UCLAというメジャーなカレッジに入ったということで、気の早い日本人ファンは、あるいは庄島にNFL入りを期待するかもしれない。だが、NFLではニューヨーク・ジャイアンツと同軍の元名センターであるショーン・オハラのファンだという当人は「残りの2年間でチームの勝利に貢献できる選手になること」に集中すると同時に「アスリートとしてだけではなく学生としても100パーセント出しきりたい」と話す。

 米国の学校スポーツでは、学業が本分であるという意味を込めて選手を“スチューデント・アスリート”と呼ぶ。とりわけUCLAほど、学業面でもスポーツ面でもレベルの高い大学であると、文武両道や時間の使い方などは容易ではない。が、モーラコーチは「とてもチャレンジングなことだが人生において得るものは多い」と言う。地理環境学を専攻する庄島は、文武両面でバランスを取れなければ「トップレベルの選手とは言えない」ということで学内の寮に住みながら自らを律した生活を送る。

 庄島がUCLAに入ったことで興奮しているのはおそらく当人よりも日本人のアメフトファンのほうではないか。チームの本拠は米国で最も歴史のあるアメフト競技場で全国的な知名度を誇るロースボウルスタジアムだ。庄島も「サイドラインに立っているだけではなく、フィールド上に立ちたいという思いで毎回練習をしています」と意気込む。

 16年シーズンは9月初旬に幕を開ける。ゴールドのヘルメットとライトブルーのユニホームに身を包みUCLAブルーインズの一員として戦う庄島の姿が今から楽しみだ。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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