田中将大、悪くないピッチングも… 期待される“真のエース”への成長
オープン戦の不安は一掃
開幕戦の始球式には松井秀喜氏が登場 【Getty Images】
「問題なくしっかりと投げられたことは良かったんじゃないですか。オープン戦からゲームでは70球弱しか投げてこなかった中で、90球くらい投げれた(実際は87球)。いろんなボールの組み立て方もできたと思います。良かったものは良かったものとして、次につなげていきたい」
敗戦の悔しさを強調しながらも、緊張感に満ちた初登板を終えた田中の表情には手応えが確かに感じられた。この異常気候でさえなければ、もっと良い投球ができていたと周囲に感じさせたのも事実である。
超一流の金額に求められる結果
過去2年間で通算25勝12敗、防御率3.16。2年連続で名門チームの開幕投手を任された右腕が、日本人の枠を超え、メジャーでも一線級でやっていけるピッチャーであることはもう疑いもない。ただ、問題はヤンキースが田中の獲得時に支払ったのは、単なる好投手ではなく、エリート級の金額だったことである。
「全米が注目する大舞台で、試合を作るだけでなく、ほとんど完璧なピッチングでチームの士気を鼓舞する。ヤンキースが7年1億5500万ドル(約161億円)という大枚をはたいてまで日本の快腕を獲得したのは、そんな投球を期待したから。逆に言えば、それこそがメジャーで“大エース”と呼ばれる投手たちの仕事でもある」
昨年のワイルドカードゲームで5回2失点で敗れたあと、筆者はそう記した。あれから約半年が過ぎて迎えたリマッチでも、5回2/3で2失点というほぼ同様の成績だった。繰り返すが、今回は悪天候ゆえにこの内容でも上々である。
しかし、これから先の登板では、5〜6回をまとめるだけでは風当たりは徐々に強くなるだろう。年俸2000万ドル(約22億円)以上を稼ぐ投手らしく、時に支配的な投球も求められるはずだ。
期待されるメジャーデビュー直後の輝き
「(2年目に被本塁打が増えたのには)さまざまな理由があり、1つではない。まず制球が大事。そして今では打者も、彼のまっすぐがどう動くか、変化球がどんな感じかを知っている。最初は誰も知らないというアドバンテージがあったが、今後は田中の方もアジャストメントを施さなければいけないんだ」
開幕戦を前にジョー・ジラルディ監督の語ったそんな言葉は、今後の注目ポイントをわかりやすく捉えていたと言える。
適応し、さらに成長し、“真のエース”と呼ばれる投手へ。メジャーのレベルでは簡単ではないが、1年目の一時期にそれができたのであれば、再現するのは不可能ではないはずである。
悪天候下の開幕戦はプロローグに過ぎない。大変なのも、楽しみなのもこれから。大黒柱になるためにニューヨークに呼ばれた投手にとって、真価を問われるシーズンはこれから本格的に始まろうとしている。