イ・ボミら、し烈極める韓国代表争い 米メジャーが左右するリオ切符の行方

キム・ミョンウ

コース外で発生した予想外のトラブル

思わぬ不運に巻き込まれたチョン・インジ。韓国では一連のトラブルが大きく報道された 【Getty Images】

 そんなチョンは今季も出だしから好調だったのだが、3月1日、予想もしなかったケガに見舞われた。シンガポールで開催された米ツアー5戦目、HSBCチャンピオンズに出場するため空港に到着したチョンが、エスカレーターに乗った際、後ろの人が落としたキャリーバッグにぶつかって転倒したのだ。そのときに腰を強打し、状態が思わしくなく病院へ直行。そこで約1〜2週間の安静が必要との診断が下った。

 ここで問題になったのは、このバッグが五輪出場を争うジャン・ハナの父親の物だったこと。「しっかり謝罪を受けていない」「謝罪の意は伝えた」との双方の家族を巻き込んでの水掛け論がヒートアップしたのだが、チョンが公式ファンクラブのサイトで「一部の行き過ぎた憶測がこうした事態を招いてしまいました。これ以上、争い事が起きなければいいです」と正式にコメントを残して事態の収拾を図った。

 結局、チョンは腰の治療のため、3試合欠場を余儀なくされたが、今週のANAインスピレーションでようやく復帰する。チョンのマネジメント会社は「正常なコンディションに回復している」と話しているが、約1カ月の間実戦から離れていたため、大会期間中に試合勘をどれだけ取り戻せるのかがカギになるだろう。

イ・ボミの五輪出場は?

Tポイントレディスで2位タイに入ったイ・ボミ。好調をキープし、メジャー初制覇へ挑む 【Getty Images】

 そして、日本でもっとも期待され、注目を浴びているのが、昨年日本ツアーで7勝し初の賞金女王を獲得したイ・ボミだ。現在世界ランキングは15位で、韓国勢では8番目。このANAインスピレーションで好成績を収めなければ五輪出場の道が険しくなるのは、本人も重々承知だ。しかし、イ・ボミは「最後まで諦めていません」と強気。逆転で五輪切符を勝ち取るためにも、米ツアーメジャーの初戦でトップ10以内には食い込みたいところだろう。

 今季のイ・ボミは、日本ツアーよりもポイントの高い米ツアーからシーズンをスタートさせている。すべては五輪出場のためだ。まずは2月のホンダLPGAタイランドに推薦で出場して、24位タイとまずまずの結果を収める。そこではランキングの変動こそなかったものの、早くに実戦感覚を取り戻したこともあり、今季日本ツアー開幕戦のダイキンオーキッドレディスで6位、2戦目のPRGRレディスでは今季初優勝を手にした。さらにTポイントレディスでも2位タイと、賞金女王の勢いは今年も健在だ。

3度目の全米メジャー

 イ・ボミに今年のホンダLPGAタイランドの試合前、「五輪を自分の中でどう捉えていますか?」と聞いたことがあった。

「五輪ね……」とため息交じりにつぶやくイ・ボミに、隣にいた母のファジャさんが「(五輪には)行かないといけないでしょ」と娘に語りかけた。

「確かに難しいし険しい道かもしれないけれど、去年以上の成績を残そうと思ったとき、五輪出場を目標にしました。それを達成するために全力を尽くさないと」

 イ・ボミはそう言って笑顔を見せるのだった。

 好調をキープして米国に乗り込んだイ・ボミ。戦いの舞台となるミッションヒルズCCは、専属キャディの清水重憲氏と今オフの合宿で2度もプレー済み。本人も「最初に回ったときよりも難しくないかも。グリーンの硬さ次第でスコアが変わると思います」と話す。

 メジャーの舞台は2010年、2011年の全米女子オープン以来3度目だが、目標のメジャー優勝をこの大舞台で達成してもらいたいところだ。それぞれの思惑が交差する米メジャー初戦――。韓国勢の五輪切符を賭けた争いは、この大会が大きな一つの山になりそうだ。

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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