五輪イヤーの大阪桐蔭には何かが起こる!? 土佐の鋭い立ち合いを押し戻す横綱相撲

楊順行

変化球で“攻め”た高山に合格点

150キロ左腕として注目された高山だが、スピードを抑えて低めを突く投球で8回を無失点と好投した 【写真は共同】

 高山についてはこうだ。
「全開でガンガン行くのもひとつの方法ですが、点差を見ながらバックを信頼し、低め低めに集めていましたね。ゼロに抑えたのは評価していいと思います」

 高山にとっては昨春、準決勝で敦賀気比高戦で救援し、4回3分の1を無失点に抑えて以来の甲子園。無失点は12回を超えたことになる。
「ホッとした、というのが正直なところ。序盤は球が浮き、ボールが先行したのは課題ですが、真っすぐよりも変化球で”攻める”ことを意識しました」

 大会前には12年の春の初戦、藤浪晋太郎(現阪神)が花巻東高・大谷翔平(現日本ハム)と投げ合ったビデオを見た。「背番号1を背負うというのは、チームを背負うということ」と、その年の春夏連覇を成し遂げた偉大な先輩の姿を見て、自らを鼓舞した。

 西谷監督は、こう話す。
「ボールに角度がつくところは、藤浪より勝っていると思います」

昨夏の敗退で芽生えた高い意識

 昨年夏は、大阪の準々決勝で敗れた大阪桐蔭高。「2季連続で甲子園を逃すことはできない」と高い意識でスタートしたチームは、12年ぶりに秋の近畿を制覇し、神宮大会でもベスト4に進んだ。高山が150キロを計時し、一躍注目されたのもその神宮大会だった。そして、次の対戦相手は神宮大会で勝っている木更津総合高。そのときは、「ここまで来れたのが不思議なくらいのチーム」(西谷監督)だったが、5対2で勝っている。

 大会前の練習試合では絶不調で、秋までの1番から2番に下がった中山だが、その打球で相手守備陣を驚がくさせたこの日は三塁打含む2安打と復調気配で、こう宣言した。
「敦賀気比高の林中(勇輝主将)は、中学のときからライバル。他にも知り合いがいるし、去年負けている相手なので、勝ち進んで準決勝で対戦したい」

 08年夏優勝、12年春夏連覇と、たまたまにしても五輪イヤーにはめっぽう強い大阪桐蔭高。気が早いが、もし5勝して優勝すれば西谷監督は、かつてPL学園の全盛時代を率いた中村順司監督の勝率8割5分3厘をわずかに上回ることになる。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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