サンウルブズ・田邉コーチが目指すもの 「沈みかけたところから豪華客船に」
ハメットHCと情報の共有を
サンウルブズの指揮を執るハメットHC。後方が田邉コーチ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
HCの「ハマー」ことハメットとは、始動前から連絡を取り合った。2月上旬から愛知、沖縄で合宿をするなか、今回が初来日という指揮官の意図を汲みとっていった。
「今はみんなで助け合っていく環境づくりを大事にしているんだ、と。確かにひとつの脳みそより、40個の脳みそが集まっていた方がいい。間違いなく言えるのは、ハマーは日本人選手のことはまだそこまで把握してない。僕もその手助けもできれば。できるだけみんなで同じ画を見るために、僕が知っている日本人の情報を共有したい」
グラウンド上では、攻撃戦術の確立を担う。他の首脳陣と意見をすり合わせ、大まかな枠組みを練る。それを日本代表経験者の堀江や日和佐篤、立川理道、田村優、サントリーでもプレーするピシといった「ストラテジー(戦略)リーダー」に「どう思う?」と投げかける。煮詰め、まとめた意見を、チーム全体にプレゼンする。
「どうスペースをつくるのかを選手間で共有すれば」
キーワードは、「スペースクリエイター」と「フィニッシャー」。プロップ、フッカー、ロックという黒子役が、「スペースクリエイター」として接点で相手を引きつける。それ以外の選手が「フィニッシャー」として、空いた場所を一気にえぐる。
「エディージャパンは、準備期間があったからあのラグビーをできた。ただ、2〜3週間ではあれだけのフィットネスをつけるのは無理だし、戦術を落とし込む時間もない。1、2歩下がったところから始めないと」
田邉は解説する。
「このチームにはスーパースターはいない。ただ、ハードワークする選手がたくさんいる。どうスペースをつくるのかを選手間で共有すれば、自ずといいチャンスが生まれてくる気がします」
「ゼロから作り上げる経験はプラスになる」
次世代の選手が憧れるチームを作ることができるか? 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
沖縄では、ゴールキックの居残り練習にも加わった。ピシとともにキッカーを務める田村、立川のフォームや精神バランスを安定させるべく、蹴り込む姿を動画撮影。すぐにうまくなる魔法などないから、まずは個別の課題を丁寧に抽出する。
「コーチとしての目標ですか?……ゼロから作り上げるチームが、実際にどう作り上げるのかを知るのは間違いなくプラスになる。今度、似たような状況のチームに呼ばれてもすぐに対応ができる……。そんな風になれたらと思いますね」
魅惑的な言葉と地道な下働きで、派手な「豪華客船」を作り上げる。その経験を、もっと広い世界で生かしてみたい。