『ジョーのあした』に見る辰吉丈一郎 “家庭人”であり“現役”であること
95年8月からの姿が描かれる
ボクサー辰吉丈一郎の生き様を追った映画「ジョーのあした」が公開された 【写真は共同】
辰吉は89年にデビューし、その2年後、わずか8戦目にしてWBC世界バンタム級王座を奪取(91年9月)。しかし網膜裂孔に見舞われ、初防衛戦で王座陥落(92年9月)。そこから再起を遂げ、93年7月にWBC世界バンタム級暫定王座を再度獲得するも、今度は網膜剥離により同王座の返上を余儀なくされる。だが、手術に成功した辰吉は海外で復帰戦を行い、これに勝利しWBC世界バンタム級王者・薬師寺保栄との対戦に臨むも判定負け(94年12月)――ここまでで既に1本の映画でも余りあるドラマチックに過ぎる展開だが、『ジョーのあした』は翌95年8月、ラスベガスに戦いの場を求めた時点から始まる。
父とともに描いた世界王者の夢
「僕を描くと“家族”というか、もうそれしか言いようがないです。そうじゃないとおかしいでしょ。僕一人だけじゃ辰吉が成り立たないです」
いみじくも辰吉自身がそう語るように、映画では父を語り息子たちを案ずる姿から“家庭人・辰吉”が浮き彫りとなる。「親は子どもに大したことはできない」と話す一方、「うちの父ちゃんは、分からんくらい凄い」と影響の大きさを語り、今も現役にこだわるその姿は、父とともに描いた世界王者の夢を貫こうとしているようにも見える。
誰よりも人を惹きつけるボクサー
次男・寿以輝(左)もすでにプロで3勝。歴史の長さを感じる 【写真は共同】
「ボクサーのドキュメンタリーでもありますけど、1人の人間としての20年でもあります。観てもらって頷く人もいれば、“自分はこの人とは考え方が違うな”って思う人もいると思うし、それはもう映画の観方だと思います。でも、辰吉くんじゃなかったら、こんなに執拗に追い掛けていないです。撮っても撮ってもまだ何か持っているというか、まだ魅力の一部でしかないと思うから続けられたんです」(阪本監督)
辰吉・監督ともに、続編となる『ジョーのあさって』製作を匂わせる。辰吉が言うように辰吉=家族であるなら、今後も寿以輝の活躍も含め、辰吉一家から目が離せない。
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