U−23が参戦するJ3、成功の鍵は? FC東京、G大阪、C大阪それぞれの事情

元川悦子

あえてトップチームと差をつけるC大阪

完全にトップとU−23を別々に動かしているC大阪。大熊清監督(写真)は「いいも悪いも『下剋上』。下から這い上がるハングリー精神を持ってもらいたい」と語る 【写真は共同】

 一方、J2のC大阪はJ1の2クラブとは異なり、J2とJ3の日程が重複することも加味しながら、完全にトップとU−23を別々に動かしている。トップチームは1月中旬に大阪で始動した後、タイ・宮崎キャンプを経て、28日に町田ゼルビアとの開幕戦を迎える。

 U−23は1月下旬に高知でキャンプを実施。その後は大阪で地道な調整を続けている。練習時間もクラブハウスのロッカーも別にし、遠征の長距離移動もほとんどバスを使うなど、「2軍」という位置づけを若い選手たちに実感させているのだ。

「いいも悪いも『下剋上』。下から這い上がるハングリー精神を持ってもらいたい。そういう厳しさが、今までのセレッソには足りなかった。練習時間もロッカーも別にすれば、トップとの違いを痛感するだろうし、鳥取や富山へのバス移動もタフさを養うことにつながる。僕らがJFLを戦っていた90年代はバス移動が当たり前でしたし、ブラジルなんかでもごく普通。コスト削減にもつながりますからね」と大熊清監督は語気を強める。

 トレーニングが別になる分、指導者同士のコミュニケーションはより不可欠なものとなる。今季は大熊監督の実弟である裕司氏がU−23監督に就任。彼らは常日ごろから細かい意思疎通を図りながらトップの戦術をU−23に落とし込み、個を育てるように仕向けていくという。

「U−23はわれわれの育成の一番上のカテゴリーという捉え方。これまでU−23年代はレンタル移籍などで公式戦の出場機会を増やすように努めてきましたが、自前で個を伸ばし、トップの戦術に適応できるように仕向けることはやはり重要です。ハードワークや守備意識は現代サッカーでは当然のごとく求められますが、今までのセレッソには確かに足りなかった。そこを突き詰めていき、攻守にアグレッシブに関われる選手をU−23からトップに数多く引き上げたい。トップとU−23の選手入れ替えは常時行います」(大熊裕司監督)

 セレッソのトップチームは今季もJ2での戦いを強いられるが、中長期的にJ1復帰、J1タイトル争い、AFCチャンピオンズリーグ参戦という未来像を見据えて、あえて今季のJ3挑戦に踏み切った。「J3にはユースの庄司(朋乃也)や17歳の森下(怜哉)、15歳の瀬古(歩夢)といった2種登録の選手もどんどんトライさせたい」と大熊清監督が言うように、10代のタレントを輩出できれば、今後への礎を築くこともできる。日本屈指の育成クラブとして、彼らはU−23の活動を重視していくつもりだ。

U−23チームの成功の鍵を握る成果と運営

FC東京U−23は味の素フィールド西が丘(写真)や江東区夢の島競技場でホームゲームを戦う。集客や広報宣伝活動、試合運営といった問題もクリアしなければならない 【写真:アフロスポーツ】

 このように3クラブの事情はまちまちだが、「個を育てること」が最大のテーマなのは間違いない。その一方でJ3は公式戦。J2昇格がなかったとしても、有料試合である以上、やはり結果は求められる。「勝ちにいかなければ意味がない」とFC東京U−23の安間監督も強調する通り、現場サイドは上を目指す意識をもちろん忘れてはいない。

 けれども、FC東京やG大阪はチームを固定して強化ができないため、本気で今季J2昇格を狙う大分トリニータや栃木SC、AC長野パルセイロのようなチームと互角に戦えるのかどうかは未知数だ。昨季のU−22選抜もモチベーションにばらつきがあり、強化に直結しなかったという声も根強い。そこをどうしていくかは各クラブや指導者の手腕によるところが大だろう。

 加えて言うと、クラブ側は集客や広報宣伝活動、試合運営といった問題もクリアしなければならない。FC東京U−23は味の素フィールド西が丘や江東区夢の島競技場でホームゲームを戦うが、誰が出るか直前までハッキリしなければ、集客活動やイベントなども仕掛けにくい。スタンドが閑散とする中では選手のレベルアップにもつながりにくい。いかにしてJ3を盛り上げていくかは非常に難しいテーマなのだ。

 それでも、FC東京にとっての「西が丘」や「夢の島」はかつての聖地。G大阪にとっての万博記念競技場やC大阪のキンチョウスタジアムも同様だろう。クラブが長い歴史を紡いできた場所にレジェンドとも言うべきOBらを呼んでイベントなどを開催すれば、オールドファンが足を運んでくれる可能性もある。アイデア次第でJ3の試合を有効活用でき、リーグ全体を盛り上げられるチャンスも少なくない。

 今季、この3クラブがJ3でどんな成果を残すか、運営面で成功するか否かによって、今後のU−23の活動、J3のあり方も大きく変わってくる。近い将来、J2昇格の道も開かれるかもしれないだけに、3クラブの動向が大いに気になるところだ。3月13日のJ3開幕節では、FC東京U−23がSC相模原とのアウェー戦、G大阪U−23がY.S.C.C.横浜とのホームゲーム、C大阪U−23がグルージャ盛岡とのホームゲームにそれぞれ挑む。まずはその戦いぶりに注目していきたい。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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