長友は主力として信頼されているのか? 人選が定まらないインテルのSB事情

神尾光臣

チームの歯車が狂い、場当たり的な起用が続く

12月中旬からチームの歯車が狂い、長友(右)の起用も場当たり的になった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 ところが、一時は首位に立つなど、好調にいっていたチームの歯車が突如狂いだした。12月20日のラツィオ戦では1−2でまさかの敗北。SBもテレスとモントーヤという攻撃的な人選で臨んでいたのだが、ラツィオのサイドアタックの前に両者ともに決壊する。するとこの後、SBの人選も半ば場当たり的になってきたのだ。

 年明けのエンポリ戦(1−0)では、左に長友、右にダンブロージオというコンビに回帰。ところが1月10日のサッスオーロ戦では両者が左右を入れ替えてプレー。しかしアディショナルタイムに長友の甘いクリアを拾われ、最終的に0−1の惜敗に終わると、また人選が変わった。1月16日のアタランタ戦ではテレスが左SBに復帰、しかしダンブロージオがPKを献上し、テレスも途中交代になる。3日後に行われたコッパ・イタリア準々決勝のナポリ戦では長友とダンブロージオに戻りこれは2−0で完勝、しかし23日のカルピ戦ではテレスとモントーヤという人選になり1−1の引き分け、両者ともに途中交代となった。そして4日後、コッパ・イタリア準決勝ユーベ戦でダンブロージオと長友を新たにぶつけるが、3失点を献上して惨敗。すると今度はダービーで、今までろくに出場機会を得ていなかったサントンとファン・ジェズスを急に先発させたのだ。

 序盤は出場機会を失っていた長友の復活劇もこれに近いものだったからおかしなことではないのだが、今回は思い切り裏目に出た。試合勘のないサントンは前半でガス欠、ファン・ジェズスは前述の通り本田を止められず、ミランの右サイドの連係に振り回された。

 1月6日のエンポリ戦以降勝利がなく、点を取れるようにチームをいじれば、今度は失点がかさんでくるという悪循環。「われわれは前半戦で築いてきたものを20日あまりで台なしにした」とマンチーニ監督は頭を抱えていたが、誰がどこに入っても良いプレーができるようにという一体感は文字通り見る影もない。こうなればメンバーを固めて連係を作っていくほかはないと思われるのだが、そうなった場合に長友は主力として信用を勝ち取れるのだろうか。問題はここだ。

安定感を欠けば、高さ不足がマイナスになる

高さが不足する長友が生き残るためには、プレーの安定感が不可欠だ 【写真:ロイター/アフロ】

 長友は出場した試合では、90分間のほとんどは良いパフォーマンスができている印象だ。走力を生かし、対面のアタッカーを抑える仕事においてはマンチーニ監督からも一目置かれているはずで、事実ナポリやユーベなど同格か格上相手の試合にはスタメンに起用されていた。それでいて攻撃でもチャンスは作れており、サッスオーロ戦などは2アシストが成立してもおかしくはなかった。

 だが、試合の中では度々軽率なクリアミスやインターセプトのミスなどがある。折が悪いことに最近の試合では、そこから生じた逆襲を味方が止めきれず、失点を招いてしまった。往年のハビエル・サネッティ(現インテル副会長)のようにとは言わずとも、長友には余裕の少ないときでも落ち着いてボールを処理できるような安定感が、生き残りのために必要となるだろう。

 またユベントス戦では体格差を狙われた。わざわざ長身のポール・ポグバをぶつけられて、パワープレーで起点を作られた。長身の空中戦ばかりがサッカーではなく、ゆえに長友もここまで戦えているのだが、他の面で安定感がキープできなければ、高さのないことが即マイナス要因になる。長身のサントンとファン・ジェズスがダービーで使われたのは、そういう背景もあるのかもしれない。

 ローマやミランなど、後半戦で復調の兆しをつかんだライバルも出てきた。インテルにとってはまさに正念場。「インテルは家族」と長友は言ったが、文字どおり家のピンチを守るためのたくましさが求められている。

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著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

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