難しい最後の1枠…「眼を重要視」=16年センバツ出場32校の選考理由

松倉雄太

地域性も加味された市和歌山

21世紀枠で出場が決まり、喜ぶ釜石の選手たち 【写真は共同】

【近畿6枠】 近畿は5校目に智弁学園(奈良)を選出した後、6校目を市和歌山(和歌山)と報徳学園(兵庫)で争った。この中で「両校の実力は同等」(杉中豊・地区別小委員長)と評価された。記者会見では市和歌山が明石商(兵庫)にコールドゲームで敗れたことについても質問が飛んだが、「1点ビハインドの7回に投手の打順で代打を送り、その裏に出てきた投手が大量失点をした。勝負の一手で(失敗して)負けたことに関してのマイナス評価はどうかな(という意見)。それよりも6回までの内容と県大会からの公式戦の成績を見て、市和歌山の方が打率も防御率も上回った。報徳学園は逆に近畿大会での打率と防御率が良かった。こういう両校同等と判断し、最終的には地域性も加味しました」と杉中小委員長は話した。また、時系列で先に長田(兵庫)が21世紀枠で選出されたことの関連はきっぱりと否定した。

関東5枠目は総合力の花咲徳栄

【関東・東京6枠】 基本数である関東4と東京1を選出した後、関東大会ベスト8の花咲徳栄(埼玉)と東京大会準優勝の二松学舎大付で最後の1枠を投攻守比較検討した。
「これまで1人で投げ抜いてきた二松学舎大付の大江(竜聖)投手と、花咲徳栄の総合力で意見が分かれた」と磯部史雄・地区別小委員長は説明。決め手となったのは花咲徳栄の左腕・高橋昴也の力量と主将・岡崎大輔を中心にした左打者の長打力。さらに「二松学舎大付はチーム内に大江投手に頼る傾向が見られ、昨年に続き決勝で競り負ける一因ではないか」との意見で花咲徳栄が最後1枠を射止めた。

【九州4枠/東北2枠/東海2枠/北信越2枠】 4枠の九州、2枠の東北、東海、北信越はほぼ順当な選出となった。その中でポイントは同県対決の決勝となった東北と北信越の2校目。東北地区ではベスト4も含めて地域性と戦力面を検討したが、「戦力面は優勝した青森山田(青森)と拮抗している。決勝に至るまでの投打の安定感は群を抜いている」(杉中・地区別小委員長)と地域性を上回るとの評価で八戸学院光星(青森)が選出された。一方、別の部屋で行われた北信越地区では実力面で準優勝の福井工大福井(福井)を選出。記者会見で、松元泰・地区別小委員長は地域性の議論にはならなかったことを明かした。

東日本は釜石、西日本は小豆島

【21世紀枠】 東日本は5校のうち評価が高かった3校を中心に議論が進められ、最終的に満場一致で釜石(岩手)に決まった。西日本は候補4校で議論は白熱したが、最後は満場一致で小豆島(香川)が選出。

・東日本大震災の時、一生懸命に生きた子供たちが甲子園に出場することは被災地にとって大きな喜びとなる」(釜石)
・過疎地の学校の典型のようだが、練習では生徒の自主性も感じられる力をつけている。少子化の時代、生徒減に悩む学校の希望の星と言える(小豆島)
 との意見が出たことも決め手となった。

 3校目は残った7校から評価が高かった3校を中心に検討し、最終的に多数決の末、長田(兵庫)が選出された。特別選考委員会では「夜間定時制高校と通信制高校の2校が同じ敷地内に併設され、3校でグラウンドを使うなど厳しい練習環境を克服している」などの意見が出された。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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