明暗分かれた樋口新葉と本田真凜 ジュニア有望株、それぞれの全日本
試練を味わった本田
本田は今季、初参戦のJGPシリーズでコロラドスプリングス(米国)2位、クロアチア杯では優勝と快進撃を演じた。全日本ジュニアは6位に終わったものの、JGPファイナルでは銅メダルを獲得。5人兄弟のうち4人がフィギュアスケートをやっており、さらには妹の望結が人気子役という家族環境もあいまって、現在最も注目を集めるジュニア選手だ。
SPでは冒頭の3回転ループ+3回転トウループをきれいに決めるなど、出だしは快調だった。だが、後半の3回転フリップで転倒。得点も58.23点と伸びず、11位スタートとなった。それでもミックスゾーンでは時おり笑顔も見せていた。
「ジャンプでミスはあったんですけど、すごく楽しかったです。全日本は上の方までお客さんがたくさんいるので、その人たちにまで表情が見えるように演じていました。こういう大きな試合に出られたことは、自分にとって大きな自信につながると思うので、FSも頑張りたいと思います」
しかし、FSではさらなる試練が待ち構えていた。冒頭の3回転ルッツで転倒。その後は要素を決めていくが、最終ジャンプの3回転フリップで再び転倒してしまう。2つ順位を上げたものの9位に終わり、悔しさをあらわにした。
「すごく緊張してしまって、自分の思い通りの演技ができませんでした。どんな演技をしたかもあまり覚えてないくらいです。世界ジュニアが懸かっていることを考えたら、SPでノーミスができなかったので、FSはノーミスをするしかなくなってしまった。それで緊張してしまったんだと思います」
ここで得た経験を今後にどう生かすか
「海外の選手は身長が高いので、私は小さいぶん自分を大きく表現できるような演技がしたいと思っています。今はどんどん調子が上がってきているので、このまま調子が下がらないように練習をして、緊張せずに演技をしたいと思っています」(樋口)
「全日本のことはちょっと落ち込むと思うんですけど、すぐに忘れます。練習をもっとしっかりやらないと勝てないと実感したので、自分なりに頑張れたらいいなと思います」(本田)
その一方で、難度の高い3回転ルッツ+3回転ループを成功させた史上4人目の選手である13歳の青木祐奈(神奈川FSC)は16位に終わり、「すごく緊張と不安があって、それに勝てなかった」と涙を見せた。
かつてないほどジュニアの選手たちにスポットが当てられた大会になったが、それも日本女子の層の厚さを証明するものだろう。満足いく成績を残せた選手、不本意な結果に終わった選手それぞれがここで得た経験をどう生かし、今後の成長につなげていくかは彼女たち次第。来年はより進化した姿をこの舞台で見せてほしいものだ。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)