UFC“最後の絶対王者”アルド “毒舌王”マクレガーとの決着戦へ!

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アルドを挑発し続ける“毒舌王”マクレガー

暫定王者“毒舌王”マクレガーが挑戦する 【Getty Images】

 今回のアルドの相手、コナー・マクレガーはアイルランド出身の“毒舌王”だ。彼もアルド同様、少年時代にサッカーをしていたが、10代前半からボクシングを始めると「(ボクシングに比べれば)サッカーなんぞ、女のやるものだ」と言ってやめてしまう。

 やがてアマチュアボクシングでアイルランド王者となり、総合格闘技のキャリアもスタートさせたマクレガーは08年に19歳でプロデビューして以来、KO勝利を量産。イギリスの総合格闘技大会CWFCで二階級を制覇した後、13年からUFCに参戦したマクレガーは目下、5連勝を続けている。そのうち5試合でKO勝利しており、名勝負ボーナスを5度獲得した“名勝負男”だ。総合格闘技の戦績は18勝(16KO、1サブミッション)2敗で、判定勝利が一度しかない“完全決着男”でもあり、UFC出場前から数えると、現在14連勝中と勢いに乗っている。

 サウスポーのマクレガーはボクシングをベースにした左パンチが強烈だが、バックスピンキックやヒザへの関節蹴りなど変則的な蹴りも特技としている。彼のコーチを務めるジョン・カヴァナーによれば、マクレガーはそうした蹴りをチームメイトのグンナー・ネルソン(アイスランド出身で空手ベースの選手)から教わったり、ブルース・リーの映画を見たり、カポエイラやテコンドーの動画を見て修得したという。つまり、類まれな吸収力と身体能力を持つ天才ファイターなのだ。

 加えてマクレガーの才能は試合だけでなく、その破天荒な言動ぶりにも発揮される。

「俺様ひとりの力でUFCアイルランド大会をもう一度開催させてやる!」と豪語したマクレガーが母国で得た絶大な人気を背景に、14年7月、実に5年半ぶりにUFCがアイルランドを訪れた。同大会のメインに出場したマクレガーは試合前に「1ラウンドでKO勝ちだ!」と宣言すると、TUF14優勝者である“ブラジルのケンカ屋”ディエゴ・ブランダオンを1ラウンドTKOして、地元ダブリンのファンを狂喜させた。

 そして今年7月のUFC 189でついに王者アルドと対戦することが決まると、ビッグマッチに先駆けて行われたワールドプレスツアーでマクレガーの毒舌がさらに爆発。アルドが住むリオでは「俺の目を見ろ、チビ助! お前は死ぬことになるぜ!」とアルドに言い放ち、記者会見でもテーブルに靴を履いたままの両足を乗せて「俺はこの街を所有している」と、うそぶいてブラジルのファンから大ブーイングを食らった。さらに自らの地元であるダブリンの会見では「俺こそが王者だ!」と叫んで立ち上がり、アルドの前のテーブルに置かれていたチャンピオンベルトをかすめ取る。これに激怒したアルドと乱闘寸前になったシーンはテレビ番組やネットでも大きな話題を呼んだ。「俺がヤツをお仕置きしてやる」や「ヤツはマットにぶっ倒れる」などと挑発を繰り返すマクレガーに、アルドの怒りも頂点に達しており、この2人が激突する試合に世界中の格闘技ファンの注目が集まった。

憎しみと意地がぶつかり合う究極の一戦

 しかしながら、あろうことか、試合まで3週間を切った頃、突如、アルドの欠場が発表されて大騒動となる。練習中に肋骨を負傷したアルドが出場不能に陥ったのだ。UFCは前回アルドと5ラウンドに渡る大激闘を戦い抜き、絶対王者を苦戦させたチャド・メンデスを代打に立てた。大学レスリングでオールアメリカンに選ばれたこともあるメンデスは強烈なタックルと破壊力に優れるパンチを持つ強豪だ。

 マクレガー対メンデスの一戦は“フェザー級暫定王座決定戦”として行われることになった。

 この試合で何度もタックルを仕掛けたメンデスはマクレガーを倒して上になり、肘打ちやパンチの雨を降らせて顔面から流血させたものの、マクレガーもこれに耐え抜く。2ラウンドにも再び倒されたマクレガーだが、メンデスの頭部に下から肘打ちを連打し、これを嫌ったメンデスが首を取って絞め技を仕掛けようとすると、巧みに逃れて立ち上がり、アゴに左ストレートをたたき込んで逆転KO勝利した。

 マクレガーは勝利インタビューで暫定王座獲得に感激し、涙を流しながらも「アルドは俺が怖くてケガを言い訳にして逃げたんだ! 俺も大きなケガをしていたが、逃げずに戦ったぜ!」と叫んだ。

 マクレガーはこの試合が行われる3カ月ほど前にヒザのじん帯を8割近く断裂し、ほとんど歩けない状態だったという。そのため、試合直前までレスリングの練習がまったくできず、それゆえにメンデスに何度もタックルを許してしまったのだ。負傷を乗り越え、見事、暫定王座を奪取したマクレガーは予告する。

「アルドなんぞ、4分以内に仕留めてやる」

 もちろん、正王者のアルドも黙ってはいない。

「カブ・スワンソンはWECで俺との試合前に大口をたたいた。そして俺はヤツをたたき潰した」

 そう、飛びヒザを食らわせ、わずか8秒で。

「今回の試合でも同じことが起こるぜ」

“UFC最後の絶対王者”アルドと暫定王者マクレガー、両者の憎しみと意地がぶつかり合う究極の一戦はUFC史上最高の名勝負になるに違いない。

(文:稲垣 收/WOWOW UFC解説者)

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