フォーミュラE最終戦決定への紆余曲折 赤井邦彦の「エフワン見聞録」第46回
住民1万人が反対した最終戦
今季のロンドンePrixの模様。撤去作業には半年近い時間を要した 【LAT】
よくよく考えてみると私が悪い。怠慢以外の何物でもない。そこで反省して、これからは月に1〜2本は必ず書くようにする、と約束いたします。別に誰も待っていないだろうけど。
で、その再開(と自分で勝手に思っているだけですが)第1回目は、フォーミュラEの裏話です。えっ、F1じゃなくまたフォーミュラE?って言わないでください。こっちの方が結構話題が豊富なんです。
フォーミュラEは、すでに第2シーズンが始まっているのですが、来年の7月に行われる予定の最終戦ロンドンePrixの開催場所などの詳細が、つい最近まで正式発表がなされない事態に陥っていたのです。ロンドンという都市名だけで、会場が特定されていませんでした。
実は、第2シーズンのロンドンePrixも第1シーズンと同じバターシー公園が候補に挙がっていました。FEH(フォーミュラEホールディングス)はその予定で計画を進めていました。ところが、思わぬところから反対の声が上がったのです。周辺の住民の一部が、「うちの裏庭でレースカーなんか走らせないでよ」と騒いだのです。反対の声を上げた人の多くは老人です。若者は大方賛成でした。公園の周辺に住む30万人の住民のうち、反対は約1万人ほどでした。とは言っても、29万人が全員賛成というわけではないところが難しいところです。
1万人の住民が反対の声を上げたとなれば、議会も放ってはおけません。そこで、バターシー公園を地区内に持つワンズワースの議会が動きました。議会で議決を採るのが民主主義というものだと、イギリス国民が知らないわけはありません。議会制民主主義が生まれたのがイギリスですから(議会制民主主義の問題点はまた別の機会に述べるとして)。
そこでバターシー公園を管理するワンズワース地区の議会が議題に諮り、議員投票をした結果、全議員11人のうち賛成7人、反対4人でバターシー公園での開催が決定したのです。
半年近くかかった前回大会後の撤去
確かに、公園内の道路を使って設営されたコースは、観客の安全確保のために全周をコンクリートのブロックで囲ったのですが、その撤去が大変だったことは理解できます。公道コース設営の最大の課題がこのコンクリート壁の設置と撤去でしょう。加えて、公園内の道路にタイヤのブレーキ痕が沢山残ることも問題にされています。FEHは住民やボランティアと一緒にそのタイヤ痕を消さなければなりません。まあ、そういうこまごました問題が、反対派の指摘するところだったのでしょう。
地元自治体がこだわった理由
最後におまけの話。バターシー公園でのレース開催に反対した人たちは、「ロンドンには公園はいくつもあるんだから、他の公園でやればいいじゃないの」と自治体に詰め寄ったらしいのです。そしたら自治体のある人が、「ロンドンには公園はいくつもあるんだから、たまには足を伸ばして他の公園に行ったらどうですか。健康のためにも良いですよ」と答えたとか。
日本でも早くこうしたトピックが語られるようになればいいですね。
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