2年ぶりのニューヨークシティマラソンで感じた変わった点と変わらない点

南井正弘

【南井正弘】

 ニューヨークシティマラソンはご存じの通り5万人が参加する世界最大級の都市型ロードレースであり、世界で最も人気のある大会のひとつとして知られている。筆者はそんなニューヨークシティマラソンを2013年11月3日に走り、この大会が世界中のランナーを魅了する理由を理解することができた。そして今年も2年ぶりに走ることとなり、同大会が2年前と比較して変化した点と以前のままの点を体感することとなった。シリアスアスリートの視点ではなく、スタートからゴールまで楽しむことを優先するファンランナーの代表としてレポートする。

変わった点

人気アイテムのアームカバー。2年前のロゴデザインもいいが、自由の女神のアイコンがプラスされる現在のデザインもスタイリッシュでカッコいい。 【南井正弘】

その1
タイトルスポンサーがINGからTCSへ!


 一般的にニューヨークシティマラソンと呼ばれているが、今年のニューヨークシティマラソンの正式名称は「TCS NEW YORK CITY MARATHON 2015」である。TCSとはインド最大の工業コングロマリット(複合企業体)であるタタグループの一員で、インド最大のIT企業。グローバルで積極展開しており、世界46カ国で32万超の従業員を擁し、2015年3月期には155億ドルを売り上げている。

 筆者が前回出走した2013年大会まではオランダ発祥の総合金融機関であるINGがタイトルスポンサーであったので、そのときの正式名称は「ING NEW YORK CITY MARATHON 2013」で、同社のコーポレートカラーであるオレンジ及びライオンロゴはニューヨークシティマラソンを象徴する存在であり、この組み合わせを「カッコいい!」と感じる出場者も少なくなかったことから、タイトルスポンサーの変更は一部のランナーからは不評だった。「Tシャツやジャケットといったオフィシャルグッズがダサくなるのでは?」という心配する声もあったが、実際にニューヨークシティマラソンのエクスポ会場の同大会のオフィシャルシューズ&ウェアを提供するアシックスのブースを訪れると、それは杞憂に終わった。

 自由の女神のアイコンをプラスしたロゴを入れられたオフィシャルグッズは2年前の大会のものと比べても勝るとも劣らぬほどスタイリッシュで魅力的。この販売ブースの運営責任者であるアシックス アメリカ コーポレーションのスポーツマーケティングマネージャー イベント担当のビル・ロジー氏によると、「現在のロゴの評判はとてもよく、それには自由の女神のアイコンがプラスされたことが大きいですね。INGがタイトルスポンサーの時代は同社のライオンロゴを加えることが必須でしたが、現在のタイトルスポンサーのTCSの場合そういった制約がないので、デザインの自由度が高いと思います」とのこと。個人的にもオレンジカラー=ニューヨークシティマラソンというイメージは嫌いでなかったので多少寂しさはあったが、走り終わった際に荷物を預けなかったランナーの特典であるポンチョを受け取る頃には、その思いはなくなっていた。2年前はオレンジだったポンチョはブルーに変わったが、そのスタイリッシュな雰囲気は、今回も健在だったからだ。

2年前のレース後にオレンジのポンチョを着るランナーたち。「ニューヨークシティマラソン=オレンジ」と連想するランナーも少なくなかった。 【南井正弘】

今年のポンチョはブルー。こちらもスタイリッシュでカッコよかった。 【南井正弘】

ミッドソールの360度にゲルを配したニューモデルであるゲルクォンタムの限定バージョン。こちらはメンズカラー。 【南井正弘】

その2
アシックスの限定シューズに独自のグラフィックが採用された!


 ニューヨークシティマラソンのタイミングでは以前よりアシックスの限定シューズがリリースされ、いずれも参加ランナーから人気となっていたが、自分が参加した2年前はあくまでレギュラーモデルのカラー変更であった。しかし、今年の限定モデルはゲルニンバス17、ゲルカヤノ22、そしてゲルを360度方向すべてに配したゲルクォンタムのそれぞれ男女用の計6モデルに、ニューヨークを象徴するグラフィティ(落書き)アートのグラフィックがアッパー全面に配されることにより、従来以上にインパクトのあるプロダクトに仕上がっていた。

 ちなみに前述のビル・ロジー氏によると「これまでの限定モデルと同様に人気となっており、特に女性用のゲルニンバス17は全6モデルで最もよい売り上げを記録しています」とのこと。実際にこれらシューズでレースを走ったランナーも見かけたが、アッパーにニューヨークと関連が深いグラフィティアートを配することで、これまでの限定シューズ以上にニューヨークシティマラソンという晴れの舞台に出走した思い出になることだろう。

今回の限定モデル全6機種のなかで最も良好なセールスを記録したのが、このウイメンズのゲルニンバス17。絶妙なアクセントとなったピンクの差し色が人気の理由か。 【南井正弘】

2年前と比較してホカオネオネを始めとした厚めのミッドソールのランニングシューズを履いたランナーが明らかに増加していた。 【南井正弘】

その3
裸足感覚シューズの着用者が減り、厚底タイプが増加した!


 2年前は裸足感覚のシューズを履くことで効率的に足を鍛えることができるベアフットタイプのシューズを着用してニューヨークシティマラソンに出走するランナーを結構見かけたが、今年はほとんど見かけることが無かった。

 一方でミッドソール部分を従来のシューズよりも大幅に厚くしたホカオネオネやアルトラのランニングシューズを履いたランナーを数多く見かけた。これはアメリカのランニングシューズマーケットにおいてミッドソールの厚いタイプのランニングシューズがシェアを伸ばしていることに比例していると思われる。

裸足感覚シューズの着用者は減少傾向にあったが、ナイキフリーだけは例外で、今年も履いているランナーを数多く見かけた。 【南井正弘】

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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