4年前と現在のバルサはどちらが上か? クラブW杯で楽しむ“異文化の衝突”

清水英斗

4年前、バルサ戦で足跡を残せなかったネイマール

4年前のクラブW杯決勝。ネイマール(中央)はほとんどボールを持たせてもらえなかった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 4年前に行われた、2011年のクラブワールドカップ(W杯)決勝。その舞台にネイマールは立っていた。バルセロナの選手ではなく、南米代表のサントスの一員として。

 試合は4−0でバルセロナが圧勝。ネイマールは、この試合に足跡を残すことができなかった。バルセロナにボールを支配され、奪ったとしても、アッという間に囲まれ、刈り取られる。そして、再びバルセロナがボールをキープする。この繰り返し。永遠のハメ技だ。ボールを持てば違いを見せるネイマールだが、ボールを持たせてもらえない。

 当時の指揮官ペップ・グアルディオラが作り上げた、プレッシング&ポゼッションサッカーは、あまりにも衝撃的に、サントスをたたきのめした。この時代のバルセロナが1つのパターンとして採用した、純正FWを用いず、リオネル・メッシやダビド・ビジャ、アレクシス・サンチェスらもMFのように扱う、攻守完全支配のシステムは、「3−7−0」と称され、世界の注目を浴びた。

 あれから4年――。今度はネイマールが、バルセロナの一員としてクラブW杯にやって来る。ブラジルのローカルスターが、グローバルスターに成長し、特にここ2カ月の間は、負傷で離脱中のエース・メッシの不在を忘れてしまうほどのスーパープレーを連発。紛れもなく、バルセロナをけん引する存在になった。その事実に、4年という月日の早さを実感する。

月日が流れても変わらない“基本スタイル”

この4年でネイマール、スアレス(9)らが加わり、メンバーは様変わりした 【写真:ロイター/アフロ】

 この4年という月日が流れても、バルセロナの“基本スタイル”は変わっていない。というより、変わってはいけないのだ。このクラブには明確なサッカーコンセプトがあり、ポゼッションに向く4−3−3というベースシステムもある。下部組織からトップチームまでの一貫性は、彼らの掟(おきて)だ。技術と判断力を生かしたポゼッションサッカー。それは、バルセロナという大木を支える幹に他ならない。

 一方、その枝葉は、季節により異なる装いを見せる。4年前のグアルディオラのチームと、現在のルイス・エンリケのチームを比較すると、同じ幹から伸びた枝葉の部分に、いくつかの違いが見られる。

 ひとつは、メンバーの変化だ。スタイルの象徴であるシャビ・エルナンデスが、カタールのアル・サッドへ移籍し、クラブを去った。キャプテンは、シャビからアンドレス・イニエスタへ移行。シャビと入れ替わるように、今季は下部組織出身のセルジ・ロベルトの成長が著しく、ここにバルセロナの系譜を感じさせる。

 前線ではネイマール、ルイス・スアレスがチームに加わり、メッシとともに「MSN」と呼ばれる3トップを形成。誰もルイス・エンリケのチームを「3−7−0」「4−6−0」などとは形容しない。システムは、ベーシックな4−3−3だ。

 それに関連し、チームの守備のやり方も変わった。グアルディオラの頃は、相手チームがボールを持つことを許さなかった。常にボールにプレッシャーをかけ、後方はそれに続いて前進する。敵陣でスペースをコンパクトに圧縮し、高火力なスプリントの連打で、相手に息継ぎもさせず、ボールを奪い返す。かなり負担のかかる守備だが、ひとたびボールを奪って回し始めれば、ポゼッションしながら休憩することもできる。このような攻守完全支配の仕組みを可能にしたのも、ポリバレントなMFを多数起用した「3−7−0」のメンバーだった。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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