モーリス6頭目の快挙、春秋マイル連覇 香港も視野に距離は2000か1600か

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輸送、ゲートをクリア「馬の成長の証し」

2年ぶりのコンビとなったムーアも「ようやく体に見合う筋肉がついてきた」とモーリスの進化に太鼓判 【スポーツナビ】

「あとは輸送をどうクリアするかでしたね」

 堀調教師が明かすには、モーリスは輸送で体を減らしてしまうタイプの上、「連休の影響で渋滞があったのも誤算でした」。それでも蓋を開けてみれば前走からマイナス2キロ。大きく馬体を減らさずに踏みとどまった。

「馬自身が乗り越えてくれました。今回は馬に助けられましたね。馬運車の中でもこちらに着いてからも非常に落ち着いていて、ずいぶん大人になった印象を受けました」

 さらに、休み明けだとイレ込んでしまうタイプでもあるというモーリス。2カ月の間隔があいていた安田記念ですら「パドックでは気負っていた」とトレーナーは振り返るが、5カ月ぶりの今回はそんな素振りは一切なし。「装鞍所で落ち着いてい姿を見て、これなら大丈夫だと思いました」と、精神面での成長の大きさを実感したという。

 この精神面の成長は、レースに行っての最大の課題とされてきたゲート面にも好影響をもたらした。「初めて上手に出てくれましたね」と堀調教師は思わず笑顔。このゲート克服に関しては、夏場のノーザンファームしがらきでの“特訓”によって「モーリスがよく学習してくれた」成果でもあるという。そして、ムーアはこんなことを言っている。

「これが馬の成長の証しでしょうね。僕がゲートに際して特に何かをやったわけではありません。これまでモーリスはゲートの後ろの扉部分に座ってしまうことがあって、それで出遅れていたんだけど、もうこれからはゲートを怖がることもないと思いますよ」

 このように、一頓挫を含めレース間隔があいたことでの仕上がり具合、関西への長距離輸送、ゲート難と、不安視されていた3つの課題をすべて満点回答で克服。その上、5カ月ぶりの実戦であれだけの脚を繰り出し1頭突き抜けてしまうのだから、恐れ入る。安田記念からマイルCS直行Vが史上初ならば、中169日での勝利はもちろんマイルCS史上最も長いレース間隔での勝利。これまでの最長記録が1988年名馬サッカーボーイの中92日であることを考えると、いかにモーリスが図抜けたパフォーマンスを発揮してみせたかが分かるというもの。

 そして、忘れてはいけないのがまだ4歳と若いことだ。

「2歳のころと比べると、ようやく体に見合った筋肉がついてきましたね」

 ムーアがそう評価するように、モーリスの本格化はこれからなのである。

マイル一本? それとも距離延長?

今年もう1走あるとしたら香港、距離は2000か1600か 【スポーツナビ】

 そうなると、次の目標はどこになるのか? 堀調教師は毎回同じ答えで申し訳ないとしつつ、「馬の様子を見ながら、オーナーと相談してからになります」と具体的なレース名は明言せず。しかしながら、記者から12月の香港国際レースへの可能性を問われると、言葉を選びつつの慎重姿勢ながら、次のように答えた。

「早い段階から招待を受けています。ただしこれは、香港カップとマイル両方から。そういったことも踏まえて、判断していきたいと思います。距離に関しては、今日のレースぶりからは課題はなかったかなと思いますが、ジョッキーとも細かい話をしていきたい」

 そう言えば、春の安田記念を勝った後も堀調教師は、距離延長に関して挑戦したいニュアンスを含ませていた。その当時は折り合いの不安をのぞかせていたため、2000メートル挑戦プランは一歩後退した様子だったが、「折り合いも完ぺきで安心して見ていられた」というこの日のレースぶりならば、堀調教師の内心としては香港カップへと大きく傾いているのではないか。

 その一方でムーアは「今年1800メートルのレースを勝っているくらいだから、距離の幅はある程度、利くと思う。でも、馬の体の形、スピードからするとマイルがベストだと思う」とも分析している。

 このままマイル王としてこの距離を極めてほしいとも思うし、祖父グラスワンダーがそうであったようにあらゆる距離カテゴリーでチャンピオンを目指してほしいとも思う。見ている側からしてもこれだけ悩ましいのだから、陣営にとってみればどちらかに即決とはいかないだろう。ここはその判断をじっくりと待ちたいところではあるけれど、ファンのみなさんは、モーリスの今後についてはどちらの路線を望むだろうか?

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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