二つの順位表から読み解くJ1終盤戦 熱を増すチャンピオンシップ出場権争い

川端暁彦

今季ならではの好カードが実現

チャンピオンシップ出場に向け負けられないG大阪。ナビスコ杯決勝での惨敗からどの程度持ち直せているかがポイントとなる 【写真:アフロスポーツ】

 現状で優位にあるのはG大阪なのは確かだが、次節(7日)に迎える相手が広島というのが最大の問題だ。前述の通り、広島はセカンドステージ優勝と年間1位を同時に狙える位置にいるチーム。負ければ3位が一気に遠のくことは確実で、広島にしてみるとビッグトーナメントでの経験が豊富なG大阪をここで蹴落としておくのは、チャンピオンシップを制する上でのメリットがありそうだ。G大阪にとっては10月31日のヤマザキナビスコカップ決勝で鹿島に大敗(0−3)したダメージから、心理的にどの程度持ち直せているかが大きなポイントとなる。

 一方、G大阪のすぐ下に位置するFC東京は次節に柏レイソル、最終節(22日)にサガン鳥栖と対戦する流れ。一戦必勝の哲学を強烈に打ち出してきたイタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督にとって、まさに腕の見せどころといったところだろう。続く横浜FMはほとんどチャンスがないだけに、逆にプレッシャーにはならずにチャレンジャーのマインドで臨めるはず。まずは連勝して吉報を待つのみといった状況だ。次節はセカンドステージ優勝を狙う鹿島が相手となり、年間3位からのチャンピオンシップを狙うチームとセカンドステージ優勝を狙うチームが激突するという今季のレギュレーションならではのカードとなっている。

最大の肝はチャンピオンシップの盛り上がり

今季、満を持して2ステージ+チャンピオンシップ制を導入したJリーグ。チャンピオンシップの盛り上がりこそが最大のポイントだ 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 新方式の2ステージ+チャンピオンシップ制は、より幅広いチームに終盤戦まで何らかの「チャンス」が残るシステムとなったが、年間順位とステージ順位が混在する状況を生み出しており、少々ややこしくなってしまったのは否めないところ。チャンピオンシップに進出するチームの絶対数が流動的になり、よりややこしくなってしまう部分などは改善の余地もありそうだ。

 もっとも、地上波のテレビ放送等を通じてJリーグの露出を増やすことを大きな目標として導入されたシステムだけに、制度の成否を占う最大ポイントは「チャンピオンシップが盛り上がるかどうか」にこそある。四半世紀近い歴史を刻んだJリーグは、日常からリーグを楽しむディープなファンを着実に増やした一方で、「お茶の間の娯楽」としての地位を喪失してしまった。

 この10年で日本の社会における「お茶の間の娯楽」という発想自体が希薄化したのも確かなのだが、依然としてエンターテインメント産業の大きな軸がテレビの中にあることもまた厳然たる事実。このチャンピオンシップがそうした勝負の土俵に上がったとき、どの程度の数字を残せるのかどうか。それはJリーグのポテンシャルを占うものになるのと同時に、その未来をも大きく左右することになりそうだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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