有馬記念の12月28日固定は無理がある? 競馬のある日が“競馬の日”

28日開催案の背景

 それにしても、平日の12月28日に有馬記念をやる、という発想。これはどこから出てくるのでしょうか。難しく考えることをしなかったら、むしろ平日の馬券販売では売上減になるのではないか、と思うのが普通。

 なのに、何故そういう発想が出てくるかというと、現在ではネット投票の売上に占める割合が年々増しているから、というのが挙げられます。現場に行かずとも有馬記念なら馬券を購入してくれるに違いない、と踏んでいる可能性があるのです。

 ここ数年、ゲームとしての競馬の魅力を全面に押し出してきた印象もあり、それは競馬界全体に言えることですが、その感覚がはびこったあげくに出てきた案なのではないか、と思える部分もあります。声高に反対しているのが、筆者も含めて結構、高い年齢層に多いようにも感じられるからです(筆者の思い過ごしなら良いのですが)。

日本人的情緒としての有馬記念

有馬記念に感じる日本人的情緒、非日常のイベントということも忘れてはいけない(写真は14年有馬記念) 【写真:中原義史】

 サラリーマンの懐にボーナスが入る年末に、ビッグイベントを開催して売上増を狙う。世界で最も馬券の売上があるという有馬記念の大成功は、無論「スターホースが一年最後の大一番に挑み、その年の最強馬決定戦的性質を持つ」というイベントとしての本質に関連しているのは間違いありませんが、この開催日程によるところは無視できません。

 しかし、ボーナス云々とはまた別の、更に日本人の情緒的な部分が深く関わっていることも見逃すことはできないでしょう。

 多くの人がお休みをとる年末年始。慌しく過ぎるのが年の瀬の常だと思いますが、その風物詩のひとつとして有馬記念を捉えている人は少なくないはず。それは一年の最後に用意された祭典であり、ある種、非日常のイベントです。

 それを日常の延長線上、いや、そのものと言えるまったくの平日に行われては、もはや競馬に対する夢も希望もありません……と言っては言い過ぎでしょうか?

 いずれにしても、28日開催を固定化し、その日を“競馬の日”に制定する、という案にも、やはりちょっと無理がありそう。

 そもそもJRAの都合だけで、特定の日を大上段から“競馬の日”とするのもどうなのか、とも思いますし。それを言ったら“有馬記念に感じる日本人的情緒”なんて発想も不適当なのかもしれませんが。

 ともかく“平日28日有馬案”論争は一蹴して、“競馬の日”論争。こちらをより真面目に取り組むというのはどうでしょうか。

 今のところ、とりあえずは従来通り「競馬のある日が“競馬の日”」ということにしておくとして。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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