G大阪が見せたACLへの本気度 痛感したアジア勢力図の激変と対応策
「一番大事にしていたタイトル」を逃す
ACL準決勝で広州恒大に1分け1敗で敗れたG大阪 【写真は共同】
昨年、クラブ史上初の3冠を勝ち取った大阪の雄は、国内外合わせると計6つの大会でタイトルの可能性があっただけに、一部のメディアは「6冠制覇」がチームの目標であるかのように書き立てた。しかし、「出るからにはどの大会も優勝を目指す」という長谷川健太監督らの言葉を曲解しただけにすぎない。
昨年、3冠を獲得した直後「ACLは本当に楽しみ」と早くも長谷川監督が言えば、始動直後の1月にはエースの宇佐美が「アジアで一番強いチームだと証明することが、今のガンバにとって必要なこと。どのタイトルも大事だけれど、やはりACLを取りたい」と語っていた。Jリーグでも最も過密日程を強いられたG大阪が、今季最優先してきた大会がACLだった。
アジアの勢力図の変化を目の当たりに
ホームで広州富力にまさかの黒星(0−2)を喫し、グループステージ序盤から苦戦を強いられたG大阪 【写真は共同】
「昔はグループステージでタイのチームに苦戦するなんてことはなかったけれど、相対的にアジアのレベルは上がっているなと感じた」
遠藤の言葉を補足すると、アジアのレベルが上がったと言うよりは資金力を持つクラブに苦戦を強いられたのがグループステージの実情だ。広州富力のモロッコ代表FWアブデルラザク・ハムダラーやブリーラムの元ブラジルU−23代表のジオゴ・ルイス・サントらは近年のJリーグには見当たらない個の強さを持つアタッカー。3試合を終えて、グループステージ敗退の危機に立たされていた当時、強化本部長の梶居勝志も「3試合が終わって感じるのは強烈な個を持つFWさえ前にいれば、という戦い方をするチームが増えているということ。中国勢もそうだし、タイもどんどんレベルが上がっている。そういう意味でも高みを目指す上では外国人枠の充実は最低限だと思った」とアジアの勢力図の変化を感じ取っていた。
ユースからの昇格組4人とベガルタ仙台から赤嶺真吾、横浜F・マリノスから小椋を加えたにすぎない開幕当初の新戦力は、7年ぶりの頂を目指すには心もとない“軽装備”だった。だが、新スタジアムの稼働に向けたクラブハウスの移転など、必要不可欠な出費を抱えているクラブにとって大型補強ができなかったのもまた事実。「当然、久々に出て優勝するのは簡単じゃない。移動もある中で、選手のレベルと選手層の厚みを考えたら疑問符もあったけれど、国内で結果を残したメンバーでアジアでの立ち位置を確認するのが一番の狙いだった」と梶居は今大会の狙いをこう振り返る。
クラブが講じたACL対策
さらに、1月の始動直後にはアジアでの知名度を高めるべく、クラブが力を入れるアジア戦略の一環として、インドネシア遠征を実施。現地のペルシジア・ジャカルタとの親善試合を行ったが、この遠征も3年ぶりにACLを戦うチームに東南アジアのアウェーを体感させる狙いも込められていた。クラブでアジア戦略を担当する河合直輝氏は「実際にACLでアウェーに遠征する際と同じ日程で、2日前に現地に入り、前日にはスタジアム練習と公式会見という設定で試合に挑んでもらった」と水面下での努力をこう説明する。