Bリーグ・大河チェアマンが見つめる未来 16年秋開幕に向けたバスケ界の現在地

大島和人

運営組織の方向性

Bリーグの運営団体となる一般社団法人ジャパンプロフェッショナルバスケットボールリーグは、公益社団法人化を進めている 【スポーツナビ】

 Bリーグを設立する上でプロ化は目的でなく、地域に根差し、大きな公益を実現するための“手段”と言っていい。bjリーグは株式会社、NBLは一般社団法人として運営されていたが、Bリーグは公益社団法人として開幕を迎える。

 公益社団法人化の時期と目的について、大河はこう説明する。

「申請が通るという前提ですけれ、早ければ来年の4月1日、遅くても7月1日と考えています。公益の自覚、透明性を確保してオープンにしなければいけないということもある。制約はあるけれど、社会的なステータスは一般社団より高い」(大河)

 一方で、Bリーグとbjリーグが今後どのように融合していくのかには、未知数な要素が残る。

「組織で言うと株式会社bjリーグと、組織としてのNBLを合併させたわけではない。別のBリーグという組織を作り、それぞれ(のクラブ)が退会してこっちに入るわけです。10年間やってこられたエンターテインメントのノウハウだとか、スクール事業であるとか、いろんなことをやっておられる。バスケットボール界全体の発展につながるのであれば、新リーグとしても(株式会社日本プロバスケットボールリーグ/bjリーグと)タイアップできることはやっていく必要があると思っています」(大河)

日本でスポーツが文化となるために

大河チェアマンは、バスケのみならず、日本においてスポーツが文化として定着することを目指し活動を続けている 【スポーツナビ】

 Bリーグ発足とともに制度、法人の形態が変わり、メディアの扱いも大きくなっていくのだろう。報道する側として一つ気になるのが“用語”の問題だ。言葉の使い方は、競技団体の理念が反映される部分でもある。

 Jリーグは占有、独占を意味するフランチャイズでなく、“ホーム”という言葉を規約などで用い、この国に定着させた。Bリーグでもホーム、クラブといった言葉は意図的に使っていくことになるという。ただし熱心なファンを、クラブを支える人々をどう呼ぶか。bjリーグでは“ブースター”という表現が根付いている。これについては大河も「ブースターという言葉にはそれぞれのファンの思いがあるし、自然に任せていいんじゃないかと」と“静観”の構えだ。

 元銀行員らしい、丁寧で慎重な説明が持ち味の大河だが、日本のスポーツを取り巻く環境については「ぜひ言わせてほしい」と熱く切れ込んできた。

「日本って安全だし街もキレイだし食べ物もおいしいし、こんな良い国はないって思うんです。でも、ことスポーツ施設に関しては三流国ですよ。飲食は禁止とか、土足厳禁とか、そんなのでスポーツが文化として根付くわけがない。僕はサッカーのときもそこは力を入れたつもりなんだけれど、バスケットのアリーナという意味でも日本の考え方を変えていきたい。公共投資としてのアリーナでなく、事業性のあるアリーナを作っていくということが目標です」(大河)

 それはバスケのみならず、この国においてスポーツが文化として定着する最低条件でもあろう。

“夜明けの前が一番暗い”という格言がある。日本のバスケ界はFIBAの資格停止処分という闇を抜け出し、今では徐々に薄明りが差してきた。そんなあけぼのの日々の中で、Bリーグが良い朝を迎えるための準備を、大河チェアマンは今日も続けている。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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