車いすバスケ男子日本の成長と課題 リオ行き決定は新たなリスタート

荒木美晴/MA SPORTS

ライバル韓国を倒して出場権獲得

10日〜17日に行われたアジアオセアニア選手権で、リオパラリンピック出場の切符を手に入れた車いすバスケ日本代表男子 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 絶対に負けられない戦いが、そこにあった。

 10日〜17日に千葉市のポートアリーナで行われていた、車いすバスケットボールの「三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」。リオデジャネイロパラリンピックの予選を兼ねたこの重要な大会で、日本男子が意地を見せた。参加した12の国・地域のうち、リオ行きの切符を獲得できるのは上位3チームのみ。各チームがしのぎを削る予選ラウンドを勝ち抜いた日本は、最終戦で韓国を80−56で破り、11大会連続12度目の出場を決めた。

 韓国は、日本にとって宿敵とも言える相手だ。4年前のロンドンパラリンピック最終予選でも両国は死闘を繰り広げた。その時は日本が競り勝ちパラリンピックに出場。だが、その後は世界選手権やアジアパラ競技大会で韓国に水をあけられ、実に4年間もの間、韓国に勝てないまま今大会を迎えた。そんなライバルという大きな壁を、日本はいかにして乗り越え、リオへの道をつなげたのか。

戦略どおりの全員プレーが勝利のカギ

 ロンドンパラリンピック後に就任した及川晋平ヘッドコーチ(HC)がこの2年間、追求したのが、ベーシックなバスケットボールである。それを礎に、オールラウンダーの香西宏昭と高いシュート力を誇るキャプテン藤本怜央のWエースを大黒柱とし、選手12人、どのメンバーのユニットも戦力が落ちないチームづくりに注力してきた。とくに、勝利のキーを握るのが土子大輔、宮島徹也、永田裕幸、藤澤潔、鳥海連志の組み合わせ「ユニット・ファイブ」と呼ばれるセットだ。香西や藤本らの最強ラインの体力を温存する重要な役割を担っており、チームを勢いづけるその機能は今大会も大事な局面で発揮された。

 たとえば、予選ラウンドでの韓国戦。試合をリードされ、38−40と日本の2点のビハインドで最終ピリオドに突入した。これまでなら相手の勢いにのまれることが多かった日本だが、今回はユニット・ファイブの活躍でメンバーを効果的に入れ替えながら戦うことができた。狙いどおり、最後までフレッシュな状態でコートに立つことができた日本とは対照的に、韓国はほぼフル出場の5人の主力メンバーの体力が落ち始める。日本はそこを一気に突いて得点を重ね、55−48と逆転で勝利した。リオ行きをかけた3位決定戦も同様で、序盤につけられた9点差を第2ピリオドでひっくり返し、やはり全員プレーで勝ち切った。

「試合終盤でもプレーの爆発力があるのは、スタミナを分散できているから。これはチームの強みだと思う」と藤本。これまで40分近くコートに出続けることが多かった豊島英も「明らかに疲労感は今までとは違う」と語り、選手をまわしながら後半で勝負する戦い方に手応えを感じていた。

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著者プロフィール

1998年の長野パラリンピック観戦を機に、パラスポーツの取材を開始。より多くの人に魅力を伝えるべく、国内外の大会に足を運び、スポーツ雑誌やWebサイトに寄稿している。パラリンピックはシドニー大会から東京大会まで、夏季・冬季をあわせて11大会を取材。パラスポーツの報道を専門に行う一般社団法人MA SPORTSの代表を務める。

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