メイウェザー引退後の“ボクシングの顔”へ 新怪物ゴロフキンが無敗で3団体統一王者に

杉浦大介

パウンド・フォー・パウンドへの“次のステップ”

米国で人気急上昇中のゴロフキン。真のスーパースターへ必要なのはビッグネーム相手の勝利だけだ 【Getty Images】

「ボクシングの新時代がやってきた」
 17日の試合後、レミューのプロモーターであるオスカー・デラホーヤもそう宣言していた。実際に現在のボクシング界では、引退表明したフロイド・メイウェザーの後を継ぐ“業界の顔”探しが焦点のひとつ。“初めて負ける姿を見逃せない”という理由で注目されていたメイウェザーとは違う魅力を持つゴロフキンが、最有力候補の一人であることに疑問の余地もない。

 人気面も急上昇中。この日は聖地マディソンスクウェア・ガーデンが2万548人の観衆を集めて超満員になった。所属するK2プロモーションの売り出しのうまさも手伝って、カザフスタンのデストロイヤーは、2012年秋のアメリカデビューから約3年で興行価値でも一気にトップ級まで上り詰めた感がある。
 ただ、さらに次のステップを含めために、今回のレミューよりも一段上の実力と知名度を持つ相手との対戦は必須だろう。そこで注目されるのが、11月21日に王者ミゲール・コットとサウル・“カネロ”・アルバレスの間で争われるWBC世界ミドル級タイトル戦の行方だ。この中南米ドリームマッチの勝者には、WBC暫定王者でもあるゴロフキンとの指名戦が義務付けられる。
「僕はいま2本のベルトを持っているけど、すべて欲しい。コットとカネロの勝者とやりたいね。すべてのベルトを手にするまで、160パウンド(ミドル級)に残るつもりだ」
 ゴロフキンはレミュー戦直後にもそう語り、過去に4階級を制覇したプロエルトリコの英雄コット、メキシコではアイドル的存在のカネロのいずれかとの対戦を熱望している。この“準決勝第2試合”の勝者との“ミドル級決勝戦”が来春〜秋頃にでも実現すれば、“メイウェザー後の顔役”を決めるビッグイベントとして世界的な注目を集めるはずである。

足りないのはビッグネーム相手の勝利だけ

 ただ……これほど危険な選手との対戦を、もともと下の階級出身のカネロ、コットが承諾するかどうか。最新のレミュー戦でこれまで以上に総合力の高さを印象付けた後だけに、なおさらだ。特に35歳になったコットが勝ち残った場合、ゴロフキン戦の実現を絶望視する関係者は後を絶たない。
“ゴロフキンは知名度が低く、対戦しても全米的なイベントにはならない”
 聖地MSGを超満員にした後で、これまでライバルたちが対戦を避ける際の常套手段だったそんな言い訳はもう通用するまい。ニュースターに必要なすべてを備えているゴロフキンに足りないのは、ビッグネーム相手のキャリアを象徴する勝利だけ。すでに33歳と若くないだけに、頂点にいられる時間は意外に短いものになるかもしれない。それだけに、魅力を存分に誇示する大舞台が早い時期に用意されることを願うばかりである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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