センバツ絶望も清宮幸太郎は軽快 課題克服の先に見据えるは「東京五輪」
タイミング外した大江の「トルネード」
夏の西東京大会から試合が続いた清宮。それでも、秋の都大会では軽快な動きを見せていた(写真は和歌山国体のもの) 【写真は共同】
そして6回1死二塁の場面で迎えた3打席目は一転、ストレートで攻めた。今村の意図は「前の打席でスライダーを合わされたこともあるので、ストレートで差し込もうと思いました」というもの。しかし、フルカウントからの7球目、清宮はコンパクトにミートして、センター前にゴロで運んだ。今村は「想像以上にうまくて、ヒットゾーンの広いバッターでした。もっとインコースも見せたり、ストライクゾーンを広く使って勝負すればよかった」と悔やんだ。この日2本目となる清宮のヒットがタイムリーとなり、早実が1点を先制した。
この頃になると、大江のボールは序盤の勢いを失っていた。球数がかさみ、早実打線に当てられるようになっていたのだ。それでも大江は9回に迎えた清宮の4打席目で意地を見せる。清宮に5回もファウルで粘られながら、フルカウントからの9球目にストレートで空振り三振を奪ったのだ。
大江は時折、通常のモーションではなく、腰にひねりを加えた「トルネード投法」で投げることがある。清宮に対する最後の1球もこの投法で、清宮が試合後に「タイミングが取りにくい」と語ったのはこのことだろう。
この大江の渾身の投球が反撃への口火になったのか、二松学舎大付高は9回裏に早実守備陣のミスからチャンスを作って同点に追いつき、延長10回に2番・鳥羽晃平(1年)のサヨナラヒットで勝利した。
課題をクリアし「2020年」へ
夏から秋にかけて、夏の西東京大会、甲子園、U−18ワールドカップ、秋の東京ブロック予選、和歌山国体、そして東京都大会と、休む間もなく駆け抜けた清宮。疲労を心配していたが、秋に入って動きがむしろ軽快になった印象がある。夏に痛めていた右肩は順調に回復しているようで、キャッチボールやシートノックではロングスローはできないにしても、徐々に強いボールが投げられるようになっていた。いずれサードを守れるようになれば、スカウト陣からの評価はさらに高まるはずだ。
これから冬を越して、春を迎えたとき、どんな清宮幸太郎が見られるのか。
「『ここでもう一本』という場面でヒットが出ないのが悔しい。勝負どころで一本出るようなバッティングを目指したいです」
課題を一つ一つクリアしていったその先に、「2020年」が決して夢物語ではなくなる日がやってくるはずだ。