ベルギーリーグで成長続ける小野裕二 STVVを選択した理由と誓い

中田徹

カールスルーエ山田もぶつかった壁

ブンデスリーグ2部で戦う山田(右)も欧州のDFに苦しみ、半年以上ゴールから遠ざかっている 【写真:ロイター/アフロ】

 ふと、カールスルーエの山田大記の「ブンデスリーガ2部でも、DFのレベルは高い」という言葉を思い出す。昨季前半戦6ゴールを固め取りした山田だが、突然ゴールが決まらなくなり、今や半年以上ゴールから遠ざかっている。その山田の言葉を、同じくゴールから遠ざかっている小野に投げてみる。

「やっぱり(ベルギーリーグのDFは)足が伸びてくるというのがあると思います。そこの駆け引きというのが、こっちの選手はすごくうまい。それは、攻撃の選手にしろ、守備の選手にしろ。相手が足を伸ばしてきたら、股を抜いて打つのかとか、シュートフェイントで一つ外してとか、すごくうまいです。そういうのを、もっと見習いたいです」

 また、シュートがブロックされることが多いため、山田が早めにシュートを打とうとしているという体験談も、小野にはすぐ理解できた。

「焦っちゃう。それもタイミングだから(リーグの)スピードに慣れるしかないと思いますし、そのスピードの中でいろんな選択肢を自分も持てればいいと思います。シュートなのか、味方をうまく使うのかとか、一個外してシュートを打つのか、それとも股を狙って足を出してきたところを打つのかとか。そういうのは試合に出て経験していかないといけない部分。もちろん、練習でもそういう場面はあると思うけれど、練習と試合では違うので。ただ練習からそういうのを意識してやっていかないと、練習でできないことは試合でもできないと思うし、そういうところは彼(山田)が言っているように工夫が必要かなと思います」

 アンデルレヒト戦では、相手ゴールに背を向けた状態で、後ろから激しいチャージを受けて倒されてしまった小野だったが、時に驚くようなフィジカルを見せるシーンもある。ルーバン戦では、右サイドラインで後ろからチャージを受けながら倒れずにドリブルで前進し、敵のゴール前まで迫るシーンもあった。

「相手にファウルされても打開していく力が僕には必要だと思う。チームとしては倒れてファウルでFKというのはあったと思うけれど、僕個人としてはああいう場面では力強く進んでいかないと通用しないと思います」

試合に出ることの重要性

スタンダール時代は主に右サイドでプレーすることが多かった小野 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 スタンダール時代にさびれてしまったアイデアが、STVVで試合に出続けることによって、小野からまた湧き出しているのを感じる。ルーバン戦後、小野はこう語っている。

「スタンダールの時と比べて、(トップ下として)真ん中でプレーする回数が増えて、相手のDFとボランチの間でボールを受けてから素早くターンという回数が増えたし、ゴールに近い場面も増えました。あとは自分がサイドに行ったり、自由にプレーしているから僕としてはすごくやりやすいです。ゴールに向かうプレーは出せると思うから、あとはゴールとアシストをするためにどうしなければいけないのかを考えてやっていければいいと思います」

 小野の名門スタンダールからSTVVへの移籍は、クラブの格を考えれば二歩後退したことになる。しかし、スタンダールでくすぶるより、次の三歩前進を目指してSTVVでプレーする方が小野にとってずっと良いことだろう。

「試合に出るということが、直結して成長する。こっちに来て感じているのは、試合に出るということがどれだけ大事かということ。日本にいるときは高校卒業してすぐトップ(横浜F・マリノス)でずっと試合に出ていた。中学の時も、高校の時も、僕には試合に出ないということがなかったんです。それがベルギーに来て、けががあったりいろいろなアクシデントがあったりする中で、やっぱり試合に出ることが必要だと思いSTVVを選択しました。

 このチームは、僕のことをすごく必要としてくれていました。来る前に練習に参加もしたし、雰囲気も良かったです。チームも若くてフレッシュで、ここでもう一回頑張ろうと思ったからSTVVに来た。僕個人としては、ここに来たからレベルが下がったとか、そういう考えはない。もちろん、そういう見方をする人はいるけれど、そこはあまり気にせず、ピッチに入ったらやれることをやって、とにかくチームのためにどの試合も勝てるようにやるということがすごく大事だと思う。良い感覚でプレーできているから、それを継続して個人としてもチームとしてもステップアップしていきたいと思います」

 それがルーバン戦後の小野の誓い。あとはゴールという結果が欲しい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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