山田大記がドイツで感じた限界と伸びしろ ファンに伝えたかった成長への思い
今季から10番を背負う
ドイツ2部カールスルーエの山田大記。昨シーズンは入れ替え戦で敗れ、1部昇格はならなかった 【Bongarts/Getty Images】
しかし、後半戦に入るとピタリとゴールが決まらなくなった。2部リーグということもあり、山田の動画はあまり上がらなくなってしまった。昨季のカールスルーエは2部リーグを3位でフィニッシュし、ハンブルガーSVとの入れ替え戦プレーオフでは死闘の末、昇格を逃してしまった(2戦合計2−3)。山田は最後までレギュラーの座を守ったのだから、得点こそなくてもきっと健闘したのだろう。だが、この頃の彼のピッチ上での実態は分からなかった。
15−16シーズンが始まった。背番号10を背負う山田は、開幕2試合を負傷のため欠場し、チームも2連敗と開幕ダッシュに失敗した。しかし、第3節で山田が今季初出場すると、チームも2連勝と戦績をタイに戻した。だが、第5節のブラウンシュバイク戦で、カールスルーエは0−6という惨敗を喫する。幸い、すぐにインターナショナルマッチウィークがあった。きっと、この休みを使ってチームは建て直すだろうという根拠もない期待を持って、僕は第6節のウニオン・ベルリン戦へ向かうことにした。
悪い流れを断ち切れず敗戦
山田は4−4−2の左サイドハーフだった。15分、山田がバイタルエリアでパスを受け、ボールを置き直してからシュートを放つが、枠を捉えることができなかった。33分にはセンターバック(CB)からパスを受けた山田がターン。味方とのワン・ツーから前へ出て、左からのクロスをスライディングボレーで合わせるも、相手DFにブロックされCKを得た。山田にも相手にとって脅威となるプレーがあった。しかし、チームとしては積極性を欠き、ミスを恐れてミスをする悪循環に陥る。やがてサポーターもしびれを切らし、カールスルーエの選手に奮起を促すようになる。
だが、後半立ち上がりの49分、CBの対人ミスからカールスルーエは追加点を許してしまう。後半からトップ下に入った山田は、よりボールを広いエリアで扱い、戦局を打開しようと走り回る。63分、深い位置へ引いて右サイドのオープンスペースへパスを出した山田はそのままゴール前に走り込み、クロスを受けてシュートを放ったが、やはり枠を捉えきれなかった。
77分、またしてもカールスルーエに個のミスが生まれ、3点目を失った。0−3。カールスルーエは前節からの悪い流れを断ち切れなかった。これで今季のカールスルーエは2勝4敗と、非常に苦しい開幕スタートとなった。
山田が感じる焦りとDFのレベルの高さ
ドイツではDFのレベルの高さを感じるという。日本の感覚でシュートを打つとコースに入られてしまう 【Bongarts/Getty Images】
1年前の山田は点を獲ることができていた。ウニオン・ベルリン戦でも惜しいところまでは行っていたのだが……。
「あまり点を獲れていないから焦ってしまっているんですよね。監督からも『ゴール前で落ち着け』と言われるんですけれど、やっぱり今日もボールを置く位置が悪かったり、シュートもワンテンポ焦ってしまったりというのがある。やはり焦らないようにしようとは思っています。でも、一瞬力んでしまったりというのはあるかもしれない。点を獲れている時期はすごく自分もリラックスして、良い状態でシュートを打てていたと思うんです。獲らなきゃというのは、あまり考えてもしょうがないですけれど、感じているのかな。1点獲れれば変わると思うんですけれど、その1点が欲しいというのが難しいところです(苦笑)」
また、ドイツ2部リーグのDFのレベルの高さも、山田は感じ入っている。
「昨季の後半戦、点を獲れなかったのはJリーグとは違って、シュートブロックの速さだったり寄せ方だったり、コースの入り方がすごくうまい。それは全然違いますね。Jリーグだったら(ボールを)一個持ち直してもまだチャンスがあったけれど、こっちでは一個持ち直したらコースが消されてしまう。だから早く打たなきゃと感じる。 日本の感覚で打っているとコースに入られ、だいたいシュートがDFに当たってしまう。とにかく今は相手を見るというのと、早く打つことを意識しています。(シュートをDFに)当てないように。でも、今日はシュートがDFに当たってもないし、枠にも行ってなかった」
33分に自らビルドアップの主体となってフィニッシュまで持ち込んだプレーは、山田も手応えを感じていた。
「ああいう流れを作っていきたいんですけれど、去年の後半戦から相手も自分たちの攻撃を研究してきているのを感じている。その中で自分たちも戦術を少しずつマイナーチェンジしてやっています。良い時はもっと迫力があるので、チームとしてガッと行った時はかなりチャンスになってます。今は局面では(迫力が)たまに出てますけれど、そういうところでちょっとリズムに乗り切れてないところがある」