セナに並んだハミルトン、重なる光景 “F1の行方”見守る現場は慌しく

田口浩次

バトン引退報道をはじめ話題は尽きない

フェルスタッペンに抜かれたアロンソ(手前)は無線で憤りをぶつけた。ホンダにとっては悔しい日本GP復帰戦となった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 ハミルトンの圧倒的な強さが際立った一方、取材現場ではレース前から多くのことが話題に上った。シンガポールGP直後に報じれたマクラーレンのジェンソン・バトン引退の噂。9月28日の英国の裁判所の判決によっては、シーズン中のチーム消滅かルノーによる買収かで揺れるロータスの行方。フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルエンジン規制における不正問題、そしてレッドブルとアウディグループとのコラボレーションによるVWのF1参戦可能性の消滅。その余波で発生した、トロロッソがホンダに16年のパワーユニット供給を求める可能性の浮上。さらには、レース中にアロンソが無線交信で叫んだエンジンへの不満などなど……。パドックではレースそのものよりも、“F1の行方”に関する話題で持ちきりだった。

 まず、バトンの引退報道。これはチームメートであるアロンソとの待遇の差にモチベーションを失い、F1を引退することを決断したというもの。実際、木曜日のFIA記者会見などで引退について問われたバトンは「まだ発表できない」と言葉を濁したものの、引退の可能性があることは除外しなかった。その後、BBCによると、マクラーレンはロン・デニスがバトンと会談し、チームとして慰留したことを明らかにした。レース後にロン・デニスはバトンとの契約は来年も残っていると言い、引退の可能性はなくなったとしている。

アロンソの怒りとホンダの無念

 また、同じ囲み取材では、アロンソが27周目にフェルスタッペンにオーバーテイクされたことへの怒りをぶつけ、「GP2エンジンだ、GP2、アーッ!」と無線で叫んだことも追求された。ロン・デニスは「確かにフラストレーションがたまる状態かもしれないが、あのような行為は建設的ではない」とアロンソの行為を批判した。その後、アロンソは自身のツイッターで「ふさわしい行動ではなかった、個人的なやりとりをすればよかった」と謝罪の意思を示して、事態を終息させようとしている。

 このアロンソのエンジン批判に対して、ホンダのプロジェクトリーダーである新井康久氏は「激励と思って受け止めている」と、ドライバーとしてあのような状況になれば当然の意見だろうと擁護した。また、バトンが2台のマシンに同時に左右からオーバーテイクされたことについては「応援してくれていたホンダファンに申し訳ない」と悔しさをあらわにし、パワーユニットのポテンシャルがいまだ十分とは言えないことも認めた。

 一方で、VWのディーゼルエンジン不正検査問題と、ルノーの撤退もしくはロータスチーム買収に絡む問題から、複数チームへのパワーユニット供給が求められるのではないか、という質問に対しては、現時点ではそうしたオファーがないことから来年もマクラーレンへの独占供給しか考えていないこと。今後周囲の状況が変わることがあっても、果たしてホンダのパワーユニットを求めるユーザーがいるかはわからない、と答えて、ホンダはパワーユニットの供給姿勢にかなり消極的な立場であることを示した。

存続危機のロータス、ルノーが買収を発表

 チーム撤退問題が浮上したのはロータスだ。日本GPでは、使用料金の未払いからチームホスピタリティーが使用できず、スタッフの食事をF1のボス、バーニー・エクレストンがパドッククラブを解放することで対応するなど、存続の危機にひんしている。エクレストンは先月のチームスタッフの給料も立て替えたと言われており、ルノーによるチーム買収の話がまとまらなかった場合、日本GPが最後のレースになるだろうと噂されている。その可能性について、ロータスのスタッフは口を閉ざすものの、複数のライバルチームのスタッフたちからは「ロシアにはいないらしい」という声も漏れ伝わってくる。そんな中、翌28日になってルノーが正式にロータスの買収を発表。ルノーは38年間続いたF1活動を今後も継続することとなった。

 見事なまでに晴れわたった秋空の中で行われた日本GPは、ハミルトンの勝利、フェラーリの復調、若手の台頭といった、ファンには見応えのあるレースであった。それと同時に、F1関係者にとっては、現在F1が抱えているさまざまな問題が並行して進行する、実に慌しい週末だった。

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