日本代表の対戦相手を戦術から分析 ラグビーW杯プールB展望

斉藤健仁

サモア代表戦<10月3日(土)22:30キックオフ>

サモア代表の司令塔であり、日本のサントリーでも活躍するトゥシ・ピシ(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 スコットランド代表戦から中9日、10月3日、日本代表はロンドンの北に位置するミルトンキーンズでサモア代表と戦う。サモア代表戦は、一言で言えば「個」対「組織」の戦いとなるだろう。

 サモア代表は大型WTBアレサナ・ツイランギ(185センチ、111キロ)を筆頭にFW、BKといったポジション関係なしに、強く激しいプレーが持ち味だ。アタックでも「3ポッド」を採用しているが、それほど複雑なものでもなく、選手を配置しているだけで、あとは個々の判断を重視。縦に突破したら、横に展開するという形だ。ただSHカーン・フォトゥアリイ、サントリーでもプレーしているSOトゥシ・ピシのハーフ団は、判断力に優れ、2人だけで突破できてしまうため、要注意だ。この2人を自由にさせてはいけない。

 ディフェンスでも個々が飛び出してくることが多いので、日本代表は冷静にプレーして、そのギャップを狙いたい。スクラム、ラインアウトも同様で個々が重く、激しいけれど、日本代表はしっかり組織でプレーすれば対抗できるはずだ。相手の個に対して、日本代表がチーム力で戦えば、十分に接戦に持ち込める。

アメリカ代表戦<10月12日(月)4:00キックオフ>

アメリカ代表は個々の強さと、大舞台で実力を発揮できるメンタルが持ち味 【写真:Action Images/アフロ】

 日本代表にとって予選プール最終戦となる10月11日、再びグロスターに戻り、アメリカ代表と対戦する。日本代表は近年、勝利することが多いものの、W杯では2敗と未勝利。日本代表最多キャップ(94)のLO大野均も「W杯では50%強くなる」と警戒は怠らない。そして、これまでの3戦の結果がどうなろうとも、しっかり白星を挙げたいところだ。

 基本的には、アメリカ代表はサモア代表と似たチームで、元アメフト選手のLOヘイデン・スミスやNo.8サム・マノアらフィジカルに優れた選手がおり、やや組織的だが、迫力はサモア代表ほどではない。やはり「3ポッド」を採用しているが、日本代表もその対策は十分できているはずだ。

 また、この4年間の対戦から、スクラムは圧倒しており、W杯でも変わることはない。モールからの攻撃も、ボールを継続しての攻撃も十分に通用するはずだ。相手のバックスリー(WTBとFBの総称)にWTBタクズワ・ングウェニアら速いランナーもそろうが、カウンターを警戒しつつ、しっかりとゲームをコントロールすることができれば、大いに勝算はあるはずだ。

19年の日本大会につながる戦いを

W杯の経験が豊富なエディー・ジョーンズHC(中央)の手腕に注目 【写真:アフロ】

 日本代表を率いるジョーンズHCは、オーストラリア代表の指揮官と南アフリカ代表のアドバイザーとしてW杯通算成績は13勝1敗である。直前の練習は緊張感がみなぎっていた。しっかりと大会に準備し、その手腕と勝負強さを本番でも大いに発揮してくれるだろう。

 ラグビーのW杯は、サッカーと違って、開催国枠というものが、今のところ存在しない。各プール3位以上の12チームが次大会の出場権を獲得できるからだ。2019年にはW杯の日本開催を控えている。日本代表は最低でもプール3位以上に入って、この4年間の成果と努力、その鍛え上げられたチーム力を証明してほしい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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