古都で磨かれる才能、世界に届くか!?=大森将平が日本バンタム級王座V1
ボクシング界のホープがKO防衛
快勝KO劇も「自己採点は30点」
初めて大森のボクシングを目にした人は、その言葉を初防衛に成功した王者の照れや自虐のあらわれと受け止めたかもしれない。
この日、彼が披露したパフォーマンスの輪郭だけをなぞれば、南京都高(現京都広学館高)ボクシング部の7期先輩で、フライ級で世界挑戦経験もある向井を体格とパワーの差を生かして追いこみ、2度のダウンを奪ったうえでの快勝劇だったからである。
だが、これまでの14戦全勝のキャリアのなかで22歳のサウスポーが見せてきたしなやかな身のこなしとシャープな拳に驚かされ続けてきた取材者にとっては、30点という自己評価に深くうなづいてしまう。
初回のゴングが鳴ってからレフリーが試合を止める6ラウンド1分37秒まで、大森の動きはどこか硬く、体にも拳にもいつものスピードが感じられない。挑戦者のディフェンス技術も評価すべきだが、力みからか、大振りのパンチが空を切り、前のめりになりすぎて上半身のバランスを崩すシーンもあった。
魅力ある「スケール感」を出さず…
「倒そうとする意識が強すぎた」と本人が振り返るように、この日の大森はまるでブルトーザーのように荒々しく攻め込んだ。それを可能にしたのは、挑戦者との体格とパワーの差である。「フライ級から上がってきた向井選手はパンチがないから、少々被弾しても足を止めて打ち合うファイトプランだった」と陣営の1人が明らかにしたが、それは本来の大森のスタイルではない。
軽いワンツーを顔面に放ったあと、左ボディをつないでダウンを奪った4ラウンドのシーンは高いポテンシャルを感じさせたが、ダウンを奪ったあとの追撃も彼らしくなかった。本人も「あのボディで立ってきたのは先輩の意地だったんでしょうが、あそこで倒しきらないと、世界レベルでは致命傷になってしまう」と、一番の反省点に挙げた。
「全体的に力んで動きも固かったのですが、あの場面でもパンチのまとめ方が雑になってしまった。あそこで冷静になり、捨てパンチでもう一度ボディをあけさせてからとどめの一撃を打ち込むべきでした」
これまでの大森のボクシングを見た人の多くはその「スケール感」に、他のボクサーにはない魅力を感じたはずだ。その魅力を演出していたのは、スピードとタイミング、そして絶妙な距離感である。あえてそのスタイルを捨てて戦ったこの日、収穫は「30点」という自己評価のなかで完勝したことと、はがゆさのなかでも「成長するための試合を先輩にさせてもらった」と、反省点をさらなる高みにたどりつくための糧として心に刻んだことではないか。
今後へ期待感を抱かせてくれる才能
次戦は12月、この日ライト級の王座を劇的な最終ラウンド逆転KOで守った徳永幸大とともに同じ京都のリングにあがる。「成長するための試合」を経た希有な才能がどんなボクシングを披露するのか。1人でも多くの人に、その魅力にふれてほしいと思う。
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