まだまだ粗削りも磨けば光る原石、期待の若虎・江越大賀の成長度

ベースボール・タイムズ

課題の守備面も改善へ

まだ課題はあるが、持っている力の高さは周囲も認めるところ。ファンも江越(左)に寄せる期待は高い 【写真は共同】

 課題は守備だ。目立つのは打撃面だが、試合に出続けるには一定以上の守備力が必要不可欠。山脇光治・外野守備走塁コーチは、オープン戦時から江越の守備に関して「大卒にしては悪くない。足もあるしね」と一定の評価を与えながらも、「ただ、ちょっと送球が怖い時がある」と付け加えていた。

 その懸念通り、春先の江越は、イージーセーフの先行走者をムキになって刺そうと全力で送球し、それが結果的に悪送球になってピンチを広げた。「必死になって行くから。間がないよ、間が。プロは打球判断だから。慌てないこと。そのためには経験と、前もっての準備」と山脇コーチ。同コーチは、入団時から守備の良かった選手として、俊介の名前を挙げる。実際に俊介は1年目から1軍で124試合に出場しており、江越の守備面での不安は、出場試合数の減少につながる恐れもあった。

 しかし、江越の守備は進歩する。センターの隣で守備に就く“名手”福留から「やってしまったことは仕方ないから切り替えてやろう」とのアドバイスをもらった。焦る気持ちを抑えるすべを身につけるとともに、技術の向上にも努めた。そして、5月の2軍降格中には、打球判断、守備時の1歩目のスタートに集中して取り組んだ。
「まだベンチを見ながらやけど、(ポジショニングを)考えながら自分でも動こうとしているよ」と山脇コーチ。徐々にではあるが、確実に、改善の方向へと向かっている。

首脳陣が“我慢”できるか

「3割、30本、30盗塁は将来的にやっていきたい」

 江越が入団会見時に語った目標は“トリプルスリー”である。スケールの大きさは担当スカウトからも太鼓判。現に、2軍では「真っすぐをしっかり振ること」を意識し、今季39試合に出場して打率3割1分8厘、7本塁打、6盗塁の好成績を残した。

 当面の課題は、打てない球を振らないこと。本人も、そして首脳陣も、「低めの変化球の見極め」「目付けを上げること」をたびたび口にする。それができれば三振が減って打率が上がり、出塁が増えれば盗塁機会も多くなる。さらには高めの球をたたくことで長打も出やすくなるという好循環が生まれる。

 さらに成長するためには、本人の努力とともに首脳陣の“我慢”も必要になるが、和田監督は「打席に立つたびに、内容が良くなってきている。あとは少しでも早く投手の球種であり、スピードを分かった上で、打席に立てばまた違うと思う。振ることで覚えていく選手」とスタメン起用を続ける方針を打ち出す。また、関川浩一打撃コーチも「毎日成長してるよ。経験するのが一番」と目を細める。“生え抜きの右打ちスラッガー”に対する期待は高い。

 勝負はここから。本人も「相手も真っすぐしか打てないと思ったら変化球中心で攻めてきますし、ここからが一番大事」と拳を握る。打率は上がらずとも、6月までは4割4厘(42打数17三振)だった三振率は、7月以降3割3分3厘(78打数26三振)まで下がった。それは、それまで空を切っていたバットが徐々にボールを捉えはじめた証拠である。そして、芯に当たれば飛ばせる力を、江越は持っている。打っても守っても、まだまだ粗削り。まだまだ原石の段階ではある。だが、阪神が久々に手に入れたこの原石は、磨けば光る。近い将来、強さと速さを兼ね備えた虎の申し子が、走攻守すべてでチームの勝利に貢献してくれるはずだ。

(文:小中翔太/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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