2年前の悔しさが現在への原動力に 萩原智子が見た渡部香生子の成長
「やる気スイッチ」を見つけ出す
日本選手権では4冠を達成。複数種目にチャレンジにするには、切り替えのうまさが必要となる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
はじめは、指導者に押してもらっていたスイッチも、今は彼女自身で探し出し、押せるようになってきたように感じる。苦しい展開の中でも、冷静に勝負所を見極め、「スイッチ」を押す。
五輪で金メダルを4つ獲得している北島康介選手(日本コカ・コーラ)は、練習でも試合でも、「スイッチ」を自分自身でコントロールできる選手だ。トップ選手になればなるほど、そして複数種目にチャレンジするほど、自己コントロール術がポイントになる。
それは、オンとオフの切り替えが上手とも言える。だからこそ、今年の日本選手権で渡部選手が4冠を達成し、そして今大会100メートル平泳ぎとレースの重なる山場でも、200メートル個人メドレーで銀メダル獲得につながった。
大一番は6日の200m平泳ぎ
2年前と比べて肉体的にも成長。特に首が強くなった印象がある 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
彼女には、今大会最大の大一番が近づいている。競泳5日目(8月6日)から予選が始まる、女子200メートル平泳ぎだ。今季世界ランキング1位として挑むレースになる。金メダルを獲得し、リオデジャネイロ五輪の内定も目指したいと公言している。
女子200メートル個人メドレーを日本記録で銀メダル獲得したことによって、気持ち良く勢いに乗ってチャレンジできるだろう。五輪の前年に、ライバルたちに強烈なインパクトを与えておくことは重要だ。
五輪の戦いは既に始まっている
もちろん世界記録更新へ向けての勇気ある撤退であるかもしれない。しかしホッスー選手は、これまでも複数種目に出場してきた「鉄の女」だ。そんな中、渡部選手は出場種目を回避することなくチャレンジした。この積極的に攻める姿勢は、今後、大きな財産となる。そして、ライバルに対しても複数種目で戦える強さを持っている「日本の渡部香生子」という印象は強くなったはずだ。
五輪での戦いは、既に始まっている。泳ぐたびに速く強くなっている彼女が、得意の200メートル平泳ぎで、世界のライバルたちにどんな泳ぎを見せつけるのか、楽しみでならない。