思い返すFC東京時代のインパクト 長友佑都×城福浩 初の師弟対談<前編>

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FC東京時代から長友が見せていた“違い”

当時から“違い”を見せていたと言う長友。日本代表入りを見越して、城福監督に左サイドバックに抜擢(てき)された 【写真:アフロスポーツ】

――お互いに初めて会った時の印象はどうでしたか?

長友 初めて会った時はかっこいい人だなと思った(笑)。最初は沖縄キャンプでしたっけ?

城福 沖縄じゃない。グアムだね。

長友 そうだグアムでやったんだ。あの時、「すごく細かいことをやる監督なんだな」と思った記憶があります。「俺、大丈夫かな?」と思ったのは今でも覚えているんですよね。相当細かい要求があったので。それまではフィジカルだけに物を言わせてやっていたので、不安を抱えながらやっていました。

城福 1番最初に会ったのは面接の時だったよね。

長友 ありましたね。

城福 面接の時に全選手に自己採点をつけてもらったんです。10段階でJリーグの平均が5だぞって言って。そしたら佑都が自分で走力とメンタルに10を付けてきたんです(笑)。だいたいそういう時って僕を気にしながら書くんですね。普通の人間は。だけど佑都は僕を気にしていないんだなっていうのがよく分かった(笑)。「佑都はまだJでやっていないよな? それで10なの?」って聞いたら「はい」って(笑)。逆に自分で背負っているというか、プレッシャーをかけているというのもあるし、こいつすげぇなと思った(笑)。

 じゃあお手並み拝見だなと思ってグアムキャンプに行ったときに、奥原(崇)コーチ(現・FC東京U−15深川監督)が全体練習が終わった後に若手だけを集めて1対1の練習とかをやろうとしたんだけれど、佑都は技術練習とともにフィジカルもちょっとやったんです。で、すぐ佑都を外したの。段違いだったから。佑都は覚えていないかもしれないけれどキープ練習をやったのよ。その後に1対1になったんだけれど(皆が)相手にならなかったの。それで「お前はいい。自分のことをやれ」と奥原コーチが言ったんですよ。「それでいいですか?」と僕も聞かれたけれど、見ていて「そうだな」と思ったので、了承した覚えがあります。

長友 マジですか。それは覚えていないです(笑)。(若手だけの居残り練習を)やっていたのは覚えているけれど。

城福 それはもうフィジカルとかその辺に自分で10付けるだけはあるなと。

長友 でも、そこから別メニューで技術的なトレーニングの練習を始めたんですよ。

城福 左足の練習を当時からよくやっていた。徳永が五輪代表にはなったけれど、フル代表になったことがなかったんです。僕は徳永はフル代表でやるべき選手だと思っていたので、右・徳永、左・佑都で日本代表ということを考えていた。当時(FC東京には)今ちゃん(今野泰幸)しか代表がいなかったんですよ。だからなんとか彼らを代表にと思っていたんです。

 佑都に「過去の日本代表を考えてみ。左のサイドバックがどれだけ苦労してきたか。過去の左サイドバックは皆右利きばかりで、とりあえずやるみたいな歴史だから」と話したんです。佑都はフル代表をすごく意識しているというのが分かったから、「歴史を変えろ」って言ったらクッと目が変わって。左足は相当練習していましたね。それこそ4年前のアジアカップ決勝オーストラリア戦のクロス(編注:李忠成の決勝点をアシスト)とか、インテルで見ている左とか、見る人が見たら「左利きなの?」っていうぐらい深く立ち足を置いて蹴れるようになっている。こいつやっぱすげぇなと思ったよ。「あの年齢から練習してもうまくなるんだ」って僕が教えられましたね。

長友 最初(の左足)はおもちゃみたいでしたからね。本当にボールがどこに飛んでいくか分からないぐらいのレベルでしたから。ボールを浮かすことができなかったんです。でも城福さんや奥原コーチと技術的なトレーニングを本当にたくさんやったから今があります。あれをやっていなかったら、いくらフィジカルがあっても世界では絶対に通用しないです。やっぱりある程度の技術的なベースがないといけない。だから城福さんにプロ1年目で出会ったというのは、本当に大きな財産になっていると思います。

城福 ボール回しの練習(編注:中に入った鬼にボールを取られないようにパス回しをする練習)が多かったじゃん? レギュラー陣の中で一番下手だからすぐ(中に)入るんだよね(笑)。だけど、すぐ出るの。ボールの奪取能力が高いから。だから最後は絶対に中では終わらないんだよね。

長友 確かにそうですね(笑)。

城福 「こいつが中に入らないようになったら世界で通用するのかな」と、思いながら見ていたよ。ずっと入っていたけれどね(笑)。

<敬称略、後編に続く>

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