球宴ファン投票で見る巨人人気の浮沈

ベースボール・タイムズ

90年代を支えたゴジラ

【ベースボール・タイムズ】

 90年代に入ると、西武の黄金期の中で、ライバルチームに野茂英雄(近鉄)、イチロー(オリックス)という2大スターが出現。パ・リーグの人気が高まるにつれて、球界全体の縮図も変化して行く。そして92、93、94年と阪神、ヤクルト勢の躍進の前に巨人勢はそれぞれ2人、1人、1人の選出。95年は地元での球宴開催を控えた横浜勢の前に、史上初めてファン投票選出0人となった。

 そこに現れたのが、松井秀喜だった。高卒2年目の94年にファン投票選出でオールスター初出場を果たすと、96年から7年連続でファン投票選出。98年、01〜02年は、リーグ最多の得票数を集めた。また、93年オフに導入されたFA制度を活用して次々とスター選手を獲得。その成果もあり、00年(上原浩治、マルティネス、仁志敏久、江藤智、二岡智宏、松井秀喜、高橋由伸)、01年(上原浩治、岡島秀樹、清原和博、仁志敏久、江藤智、松井秀喜、高橋由伸)と2年連続で計7人がファン投票で選出。チームの成績に直結しない部分はあったにせよ、個性的で、華のある選手が多かったことは事実だろう。

ここ数年は巨人勢が苦戦……

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 その“スター軍団”も、松井のメジャー移籍とともに瓦解(がかい)する。松井がチームを離れた直後の03年、阪神の“球宴ジャック”の前に球団史上2度目のファン投票0人となると、その後も他球団の勢いに押され、05、06、08年と阪神、11年にはヤクルト、09、13、14年と広島にファン投票選出人数トップの座を譲った。

 昨季までリーグ3連覇中の巨人ではあるが、オールスターのファン投票では12年の4人(山口、阿部慎之助、長野久義、高橋由)から13年の2人(山口、阿部)、14年の1人(阿部)と下降線をたどり、今年も広島の5人、DeNAの3人に続いて、阪神、ヤクルトと並んでの1人。中間発表では0人が続いていたが、辛うじて山口のみが滑り込んだ形となった。

「パ・リーグにはスター選手が次々と出てくるけど、セ・リーグのスターが誰かと言われれば、まだ原監督なんですよ。選手が主役になっていない」と球界OBは指摘する。“チーム力”と言えば聞こえは良いが、華のあるスター選手の減少は何とも寂しい限りだ。

 余談にはなるが、巨人のファン投票選出が1人以下の年は過去8度あり、優勝確率は8分の2の25%(80年=3位、93年=3位、94年=優勝、95年=3位、03年=3位、05年=5位、06年=4位、14年=優勝)。さて、今季はいかに――。オールスター戦を楽しみながらも、再開後のペナントレースに思いをはせる。

(文:三和直樹、グラフィックデザイン:山崎理美)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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